研究実績の概要 |
沈殿形成能を有するタンニンとして加水分解性タンニンについて検討を進めた。特に、繁用される生薬である芍薬のgalloylglucose類については、処方中にどの程度含有されているのか、これまでにほとんど検討されてこなかった。今回、逆相HPLCでは混合物として検出が困難な高分子成分についても順相HPLCを利用することにより、分析が可能であり、かつ、比較的短時間で分析できることを確認した。その結果、有機溶媒で抽出され芍薬に含有されるhexa-, hepta-galloylglucoseは、通常の煎じ方では溶出されないことが確認された。次に、汎用される芍薬甘草湯をモデル処方として、以前確立したグラジエントHPLC分析と順相HPLCを組みわせることにより、芍薬甘草湯にふくまれる主要な成分について加熱時間や火力など煎じ方の影響を検討した。また、芍薬甘草湯に附子を加えた芍薬甘草附子湯との比較を行ったところ、penta-galloylglucoseの溶出量に大きな変化はなく、相互作用は小さいことが確認できた。さらに、別な処方として温清飲中には芍薬と黄連、黄柏などのアルカロイド生薬が配合されることから、これらの生薬との相互作用についても検討を進め、芍薬のpenta-galloylglucose量がこれらの生薬との共存により煎液中で減少することを認めた。 一方、生薬成分についても引き続き検討を加えた。呉茱萸はアルカロイドがその有効成分とされる生薬であるが、今回、比較的高極性の分画についても精査を行い、プロシアニジン関連の化合物が含まれていることを明らかにした。
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