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2014 年度 実施状況報告書

抗結核薬D-サイクロセリンの生合成遺伝子を利用した創薬研究

研究課題

研究課題/領域番号 25460119
研究機関広島大学

研究代表者

熊谷 孝則  広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (70274058)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード抗結核薬 / D-サイクロセリン / 遺伝子破壊 / 代謝工学 / 異種生産
研究実績の概要

昨年度に引き続き, システインおよび硫化水素の代謝に関与する遺伝子(cysJ, cysKおよびcysM)を破壊した大腸菌株の作製と, それらを宿主とした抗結核薬D-サイクロセリン(D-CS)の大量生産実験を行った。昨年度, 各遺伝子の単独破壊株の作製に成功したので, 本年度は, それらの二重および三重破壊株を作製した。得られた破壊株(7株)にD-CS生産用ベクターを導入し, D-CSの生産実験を行い, D-CSの生産性をHPLCにより解析した。その結果, 単独破壊株においてはD-CS生産性の向上は認められなかったものの(昨年度の報告を訂正), cysJおよびcysK二重破壊株において, D-CSの生産性の向上が認められた。また, D-CS生合成遺伝子に加え, D-CS排出膜タンパク質をコードする遺伝子を共発現させることにより, D-CS生産性をD-CS生産菌と同等まで上昇させることに成功した。
別の応用研究としては, 1)D-CS合成酵素DcsGを用いた環状D-アミノ酸の合成を行った。その結果, D-ホモシステインの環状化体を得ることに成功した。2)D-CS生合成遺伝子のうち, 中間体であるヒドロキシウレア(HU, 抗癌剤として使用されている)の合成に関与するdcsAおよびdcsB遺伝子を放線菌に導入し, HUの微生物変換系の構築を行った。その結果, 遺伝子導入体は得られたものの, アルギニンからHUへの微生物変換は認められなかった。
一方, 基礎研究としては, ヘムタンパク質DcsAの酵素学的解析を行った。その結果, 電子伝達系タンパク質(フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼ)に加え, NADPH再生酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ)の存在下, DcsAはアルギニンの水酸化を触媒することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は, 応用研究として, 以下の研究計画を立てた。1)大腸菌の染色体上に存在するcysJ, cysKおよびcysMについて, それらの二重, 三重破壊株を作製する。2)作製した遺伝子破壊株(昨年度作製した単独破壊株も含む)にD-CS生産用ベクターを導入し, D-CS生産実験を行う。3)D-CS合成酵素であるDcsGタンパク質を用いて, 環状D-アミノ酸の合成を行う。4)D-CS生合成遺伝子dcsAおよびdcsBを放線菌に導入することにより, 抗癌剤HUの微生物変換系の構築を行う。一方, 基礎研究としては, 以下の研究計画を立てた。1)D-CS生合成酵素であり, アルギニンの水酸化に関与すると示唆されているヘムタンパク質DcsAの酵素学的解析を行う。
本年度の応用研究の成果としては, cysJ, cysKおよびcysM遺伝子の二重および三重破壊大腸菌(合計4株)の作製に成功した。昨年度作製した単独破壊株(3株)に加え, 本年度作製した破壊株にD-CS生産用ベクターを導入した結果, cysJおよびcysK二重破壊株において, D-CSの生産性の向上が認められた。さらに, D-CS排出膜タンパク質をコードする遺伝子の共発現により, D-CS生産性をD-CS生産菌と同等まで上昇させることに成功した。また, DcsGタンパク質を用いて, D-ホモシステインを基質とし, その環状化体を合成させることに成功した。一方, 基礎研究の成果としては, ヘムタンパク質であるDcsAの機能解析を行った結果, 本タンパク質は電子伝達系タンパク質およびNADPH再生酵素の存在下, アルギニンの水酸化活性を示すこと明らかにした。
以上のことから, 放線菌を宿主としたアルギニンからHUへの微生物変換を達成できなかったこと以外, ほぼ概ね達成できたものと考えられる。

今後の研究の推進方策

ほぼ概ね計画通りに研究が遂行されていることから, 推進方策について大きな変更はない。ただし, 本年度で計画していた放線菌を宿主としたHUの微生物変換系の構築については, dcsAおよびdcsB導入放線菌を作製したものの, アルギニンからHUへの微生物変換を達成することはできていない。本年度の基礎研究の成果により, DcsAの機能発現には, 電子伝達系タンパク質およびNADPH再生酵素の存在が重要であるとの知見を得た。そこで, 次年度の研究計画において, dcsA, dcsB, 電子伝達系タンパク質遺伝子およびNADPH再生酵素遺伝子を大腸菌に導入することによる, 大腸菌を宿主としたHUの微生物変換系の構築を追加する。その他の実験計画について変更はない。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] An alternative allosteric regulation mechanism of an acidophilic L-lactate dehydrogenase from Enterococcus mundtii 15-1A2014

    • 著者名/発表者名
      Matoba, Y., Miyasako, M., Matsuo, K., Oda, K., Noda, M., Higashikawa, F., Kumagai, T., and Sugiyama, M.
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 4 ページ: 834-847

    • DOI

      10.1016/j.fob.2014.08.006.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Aspergillus oryzae S-03 produces gingipain inhibitors as a virulence factor Porphyromonas gingivalis2014

    • 著者名/発表者名
      Danshiitsoodol, N., Yamashita, H., Noda, M., Kumagai, T., Matoba, Y., and Sugiyama, M.
    • 雑誌名

      J. Bacteriol. Virol.

      巻: 44 ページ: 152-161

    • 査読あり
  • [学会発表] 大腸菌を宿主とした抗結核薬D-サイクロセリン高生産システムの開発2014

    • 著者名/発表者名
      熊谷孝則, 小澤智紀, 青田達明, 的場康幸, 野田正文, 杉山政則
    • 学会等名
      日本生物工学会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2014-09-09
  • [学会発表] cysJ, cysKおよびcysMを破壊した大腸菌によるD-サイクロセリン高生産システムの構築2014

    • 著者名/発表者名
      小澤智紀, 熊谷孝則, 青田達明, 的場康幸, 野田正文, 杉山政則
    • 学会等名
      日本放線菌学会
    • 発表場所
      つくばカピオ(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2014-06-20

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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