研究課題
本年度は、Lb. reuteri BM53-1におけるバイオフィルム形成阻害物質の最適産生条件の検討を行うと共に, その作用機構の解明について定量RT-PCRによる解析を中心として研究を進めた。機能性食品への応用可能性も視野に入れ、種々の野菜・果汁を培地として培養条件を検討した結果、人参汁に酒粕を添加した培地で静置培養することにより、MRS培地で培養した際よりも大幅なバイオフィルム形成阻害活性の上昇が認められた。阻害物質の作用機序について解明すべく、阻害物質添加時のS. mutansにおける3つのGTF遺伝子 (gtfB, gtfC, およびgtfD) の発現量の変化について、定量RT-PCRにより解析を行った。その結果、gtfBおよびgtfCの発現は阻害物質の存在によって2-4倍上昇する一方で、gtfDの発現には顕著な変化は見られなかった。阻害物質が添加された場合に形成されるS. mutans菌体の凝集は、水流によって容易に離散するものであり、遺伝子発現の変化と合わせると、gtfBおよびgtfCの発現上昇によって形成された不溶性グルカンは、水溶性グルカンの合成に関与するgtfDの発現上昇を伴わないために粘着性に乏しく、結果としてバイオフィルムの形態をとることがない、と考えることができる。BM53-1株によるバイオフィルム形成阻害作用は、この3つのGTF遺伝子の発現バランスを変化させることによることが示唆された。合わせて、クォラムセンシング調節遺伝子群として知られるcomA-E系、最近新たに見出されたXIPと呼ばれるシグナルペプチドを介したcomS/R系、さらにバイオフィルム形成に寄与するとされる二つのグルカン結合タンパク質をコードする遺伝子 (gbpBおよびgbpC) の発現についても調査を行ったが、これらの遺伝子発現には大きな違いは認められなかった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Biol. Pharm. Bull.
巻: 38 ページ: 1902-1909
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