研究課題
潰瘍性大腸炎に対して様々な新規治療法が使用可能となっているが、多くは免疫抑制的な作用を持つものが多く、高齢発症の多い潰瘍性大腸炎に対しては感染の危険性が高いのが問題点として考えられている。大建中湯は漢方薬の一種で、これまでイレウスに使用されることが多かったが、クローン病への治療効果が近年報告されている。本検討では潰瘍性大腸炎モデルマウスとされている、dextran sulphate sodium-induced colitis model mice (DSS mice)を用いて大建中湯の抗炎症効果について検討した。大建中湯をDSS miceに投与することにより、DSS単独投与群と比較して貧血の進行、大腸の炎症による短縮が有意に抑制された。サイトカインの検討では大建中湯投与群において抗炎症サイトカインの1種であるIl-10の血中濃度の増加を認めた。有意差を認めなかったものの、炎症性サイトカインであるIL-1βはDSS単独投与群で上昇しており、サイトカインレベルでも大建中湯による抗炎症効果が示された。病理組織学的にも大建中湯は炎症の抑制効果を示した。またDSSを長期投与することによる、生存期間に関する検討ではDSSに大建中湯を併用した群で有意に生存期間の延長を認めた。以上の結果より、大建中湯は潰瘍性大腸炎モデルマウスにおいて抗炎症効果が確認され、高齢者においても安全に使用できることから潰瘍性大腸炎の安全な治療薬の一つとなり得ると考えられた。
すべて 2017
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Gastroenterology Research and Practice
巻: 1298263 ページ: ー
10.1155/2017/1298263