研究実績の概要 |
熱帯地方を中心に蔓延する「顧みられない熱帯病(NTDs)」に分類されるリーシュマニア症、デング熱に対する有効物質探索を行い、タイ薬用植物 Dalbergia parviflora (マメ科)中の genistein や isoliquiritigenin にIC50 10 μg/mL を下回る強い殺リーシュマニア原虫作用を認めた。一方、一部水酸基がメチル化されたイソフラボノイド cajannin, medicarpin は in vitro で強いデングウィルス感染抑制作用を示した。ウィルスタンパク質の複製過程に必須のプロテアーゼ活性を持つ NS2B/NS3 タンパク複合体に対して、medicarpin の強い親和性が in silico で認められた事から、本化合物の作用機作の一つに上記酵素阻害作用が示唆された。タイ薬用植物エキス約40種を用いたデングウィルス感染抑制スクリーニングの結果、中程度の活性を示すエキスが5種見いだされた事から、エキス中の活性成分の単離が進行中である。バングラデシュで喘息や天然痘に用いられる Pothos scandens(サトイモ科)からは、4 種の新規物質を含む 18 種の化合物の構造を明らかにすると共に、それらの抗女性ホルモン様作用、抗ヒアルロニダーゼ、抗ヒスタミン遊離作用について報告を行った(Phytochemistry, 121, 30-37 (2016))。同属植物に抗マラリア成分の存在が知られるバングラデシュ薬用植物 Terminalia citrina(シクンシ科)からはリグナンを主とする32種の新規物質を含む58種の化合物の構造、およびそれらの抗女性ホルモン様作用、抗リーシュマニア作用を明らかとし(J. Nat. Prod., in press, Fitoterapia, submitted)、尚続報の投稿準備を進めている。
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