研究課題/領域番号 |
25460130
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内田 龍児 北里大学, 薬学部, 講師 (60280632)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗真菌 / カイコ感染症モデル / 微生物資源 / 天然物 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
重篤な真菌症を引き起こす病原真菌カンジダ・アルビカンスを昆虫のカイコに感染させたi n vivo 様の感染モデル (以下、カイコ評価系とする) を利用し、新規抗真菌剤のリードを微生物の培養液中に求めた。まずペーパーディスク法において、カンジダのみに生育阻止円を示す培養液を選択した。次いでカイコ評価系においてその治療効果 (延命効果) を調べた。また、重篤な症状を呈する深在性真菌症の有効な治療薬であるアムホテリシン B (AMPB) の活性増強物質のスクリーニングも並行して行った。これはペーパーディスク法において、カンジダの生育に影響しない濃度の AMPB を培地中に添加した検定プレートでのみ生育阻止円を示し、AMPB無添加の検定プレートでは阻止円を示さない培養液を選択した。本年度は微生物培養液約 1,500 サンプルを評価した結果、細胞毒性を示さずにカイコ評価系で治療効果を示すサンプルを 6 サンプル、AMPB 増強活性を示す培養液を 3 サンプル得ることができた。これらにつては、現在活性成分の単離精製を進めている。また、AMPB 活性増強物質の探索においては未同定真菌 BF-0158 株の培養液より新規化合物 2 成分を発見することができた。 次に昨年度報告書に記載した新規抗真菌物質 simplifungin の作用点の解析も進めた。本化合物は酵母様真菌に対して抗真菌活性を示し、AMPB との併用では相加的な効果が確認された。またカイコ評価系においても、それぞれの化合物が単独で治療効果を示さない濃度でも併用による治療効果が確認されたことは、実験動物レベルでも効果を示す可能性を示唆している。さらに作用点は、LCMS を用いた評価系を構築し解析を進めた結果、酵母のスフィンゴリン脂質生合成過程の初期段階の酵素セリン-パルミトイル転移酵素を阻害することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイコ評価系を用いたスクリーニングでは、幾つかの候補サンプルを選択できていることから、新規リード化合物の発見を目指した単離精製が継続して進められている。また AMPB 活性増強物質においては、新規化合物 BF-015 8類を発見できており、その立体構造の解析あるいは作用機序の解析に進めることができている。次に作用機序の解析の項目では、新規抗真菌物質 simplifungin の作用点の解析が終了し、valsafungin など次の化合物の解析に着手できている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 抗真菌剤のスクリーニングに関してはカンジダ・アルビカンスを用いて継続して実施するが、真菌症の他の原因真菌である糸状菌アスペルギルス・フミガタスおよび接合菌リゾパス・オリゼを加えることで適応可能な範囲を広げる。さらに 1 次スクリーニングの評価方法をペーパーディスク法から、より感度の高い微量液体希釈法に変更することで、さらなる新規抗真菌物質の発見を目指す。 2. 新規物質 valsafungin および BF-0158類 については、まず構造の立体化学を明らかにする。次に抗真菌スペクトルを測定し、カイコ評価系での治療効果を再確認する。さらに、その成績が良ければ合成グループとの共同研究を計画し誘導体合成へと展開することで、構造活性相関を明らかにする。 3. 新規物質 valsafungin および BF-015 8類については作用機序の解明に着手する。また、simplifungin の作用機序の解析より明らかにしたスフィンゴリン脂質生合成経路が抗真菌剤の標的に成り得る可能性についても追求していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、抗真菌物質の単離精製において購入予定としていた高速液体クロマトグラフィー用のカラム、樹脂等あるいは作用機序の解析に使用する試薬・抗体等が既存のもので代用できたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
抗真菌物質の単離精製および作用機序の解析に使用する試薬・抗体等の購入を予定している。また、新規化合物生産菌の解析依頼、および合成展開のための試薬等の購入にも使用する予定である。
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