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2014 年度 実施状況報告書

PPAR-γを標的とした抗腫瘍活性天然物の探索とその併用効果に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25460134
研究機関東京薬科大学

研究代表者

三巻 祥浩  東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90229790)

研究分担者 松尾 侑希子  東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70434016)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードPPAR-γリガンド活性 / 天然物 / 腫瘍細胞毒性 / 併用効果 / HL-60細胞 / A549細胞
研究実績の概要

種々のがん細胞においてPPAR-γが高発現していることから,近年PPAR-γリガンド活性物質の抗腫瘍活性や抗がん剤の増強作用が注目されている.平成26年度は平成25年度に引き続き,天然資源からのPPAR-γリガンド活性物質の探索,およびPPAR-γリガンド活性物質と既存の抗がん剤との併用効果を評価した.
PPAR-γリガンド活性物質の探索は,EnBio RCAS Kit for PPAR-γNcoR(藤倉化成)を用いたランダムスクリーニングにより評価した.本キットはコファクターとしてNcoR(コリプレッサー)を用いているため,核内レセプターに結合する化合物のスクリーニング・評価を比較的容易に実施できる.腫瘍細胞に対する細胞毒性は,MTT法により評価した.
その結果,単一化合物としてはビャクシから単離された新規クマリン酸誘導体と,カンゾウから単離されたプレニルフラボノイド誘導体に,また漢方薬の神秘湯(構成生薬:マオウ,キョウニン,カンゾウ,コウボク,ソヨウ,チンピ,サイコ)エキスにPPAR-γリガンド活性を認めた.新規クマリン酸誘導体とプレニルフラボノイド誘導体は,それぞれ10μg/mL,1.0μg/mLの濃度で,既存の抗がん剤であるエトポシドのA549肺がん細胞に対する腫瘍細胞毒性を約5倍増強させた.神秘湯エキスは20μg/mLの濃度で,エトポシドのA549肺がん細胞に対する腫瘍細胞毒性を約3倍増強させた.
このほかに,漢方処方の大承気湯エキスと平胃散エキス,生薬の麻黄エキスと浜防風エキスにPPAR-γリガンド活性を見出した.これらエキスのPPAR-γリガンド活性は,本研究により初めて確認されたものである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PPAR-γリガンド活性を有し,既存の抗がん剤の腫瘍細胞毒性を増強させる単一化合物として,ビャクシ由来の新規クマリン酸誘導体とカンゾウ由来のプレニルフラボノイド誘導体を見出した.ビャクシとカンゾウは,漢方処方に用いられる日本薬局方収載の生薬であり,原料の入手が比較的容易である.既存の抗がん剤が効きにくい固形がんに対して,PPAR-γリガンド活性を有する腫瘍細胞毒性増強成分が見出されたことは,トランスレーショナルリサーチとして,今後,新たながん化学療法の臨床応用へと繋がることが期待される.また神秘湯は気管支喘息に適応のある漢方薬であるが,これに関しては抗がん剤の効果を高める併用薬という新たな適用の開発を志向した研究,すなわちドラッグリポジショニングとしての研究の発展が期待される.
以上より,本研究課題は概ね順調に進行していると評価できる.

今後の研究の推進方策

1) 単一化合物であるビャクシ由来の新規クマリン酸誘導体とカンゾウ由来のプレニルフラボノイド誘導体については,PPAR-γリガンド活性と既存の抗がん剤の腫瘍細胞に対する細胞毒性増強効果との相関を,PPAR-γリガンド阻害剤などを用いて検討する.PPAR-γリガンド活性を介した腫瘍細胞毒性増強効果が確認された場合,ApoTox-GloTM Triplex Assay(Promega社)などを用いて,増強される細胞死のタイプがアポトーシス型,オートファジー型,ネクローシス型のいずれかであるかを検討する.またTIG-3ヒト正常細胞に対する毒性も評価し,PPAR-γリガンド活性を介した細胞毒性増強効果の腫瘍選択性を検討する.
2) 神秘湯エキスについては,上記1) と同様の活性評価を実施するとともに,構成生薬を1つずつ抜いた「1味抜き処方」の活性を評価し,活性に関与している生薬と活性成分を同定する.
3) クマリン誘導体に既存の抗がん剤の腫瘍細胞に対する細胞毒性増強効果が認められた。そこで、クマリン誘導体を含有する生薬や薬用植物のPPAR-γリガンド活性と腫瘍細胞毒性、既存の抗がん剤の腫瘍細胞に対する細胞毒性増強効果を評価する.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] A rare type of sesquiterpene and β-santalol derivatives from Santalum album and their cytotoxic activities2014

    • 著者名/発表者名
      Matsuo, Y.; Sakagami, H.; Mimaki, Y.
    • 雑誌名

      Chem. Pharm. Bull.

      巻: 62 ページ: 1192-1199

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Two new homoisoflavonoids from the bulbs of Bessera elegans2014

    • 著者名/発表者名
      Matsuo, Y.; Kurihara, R.; Akagi, N.; Mimaki, Y.
    • 雑誌名

      Nat. Prod. Commun.

      巻: 9 ページ: 1725-1727

    • 査読あり
  • [学会発表] ユリ科 Bessera elegans 鱗茎の化学成分と腫瘍細胞毒性2014

    • 著者名/発表者名
      松尾侑希子, 橋本千聖, 赤城那奈, 三巻祥浩
    • 学会等名
      第20回 天然薬物の開発と応用シンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-11-05 – 2014-11-06
  • [学会発表] ビャクシの化学成分に関する研究 (1)2014

    • 著者名/発表者名
      山口絵美,松尾侑希子,三巻祥浩
    • 学会等名
      日本生薬学会 第61回年会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2014-09-13 – 2014-09-14

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公開日: 2016-05-27  

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