研究課題
歯周炎罹患歯肉から、コラーゲンゲル三次元培養すると口腔癌細胞の浸潤を顕著に促進するアグレッシブ線維芽細胞を分離し、「生体外口腔癌浸潤モデル」を確立した。このモデルを用いて、延べ60種類の生薬のスクリーニングを行ったところ、オウゴン、カンゾウ、ケイヒ、サイシン、ジオウ、センキュウ、ボウフウ、エンゴザク、オウレン、オンジ、ケイガイ、ゲンチアナ末、ゴシユ、サンショウ、センコツに口腔癌浸潤阻害効果が認められた。この口腔癌浸潤モデルは、歯周炎罹患歯肉から得られた歯周炎関連線維芽細胞を用いることを特徴としており、口腔癌の浸潤と歯周炎の進展に共通項が見出せる可能性がある。そこで、この口腔癌を顕著に浸潤させる歯周炎関連線維芽細胞の成り立ちを解明することが先決と考えた。幸いにも理研FANTOM5プロジェクトにおいてこの歯周炎関連線維芽細胞が解析対象となり、健常歯肉線維芽細胞と歯周炎関連線維芽細胞のCAGEデータを比較した結果、ある遺伝子の転写開始点に顕著な差があることが判明し、歯周炎関連線維芽細胞は特殊な歯肉線維芽細胞であることが示唆された(投稿準備中)。また、癌浸潤モデルを用い、口腔癌細胞の浸潤開始時と浸潤増悪期のコラーゲンゲルからRNAを回収し、GeneChip解析を行った結果、浸潤に関与する遺伝子として、CENPF, TOP2A, FMOD, PLK1, CCNB2, VCANなど、既知、未知を含む多く遺伝子発現の変化がみられた。またGO解析の結果、浸潤に関与するのは、糖鎖が付加した細胞外マトリックスタンパクとその受容体分子が中心的な役割を果たすことが示唆された。これらの歯周炎関連線維芽細胞による浸潤促進能のある細胞外マトリックス産生を生薬によってコントロールできれば、がん浸潤阻害剤として臨床応用できる可能性もある。同時に歯周炎罹患歯肉で見つかった歯周炎関連線維芽細胞が、口腔がんの浸潤にも関与していることが示唆された。
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J Clin Periondontol
巻: 43 ページ: 128-137
10.1111/jcpe.12945