近年、新しいカルシウムチャネル群として明らかになってきたTRPチャネルファミリーは有望な創薬ターゲットと目されているが、生物学的な知見も乏しく、特異的な阻害剤の開発は十分ではない。 本研究課題の初年度の計画に沿って、TRPCチャネルに対して抑制効果を持つ天然物を見いだす為の評価システムの構築を試みた。 マウス血管平滑筋のcDNAライブラリーより、TRPC6遺伝子およびアドレナリンα1受容体遺伝子をクローニングし、HEK293細胞に一過性に発現させた。α1アゴニストであるフェニレフリンの添加により細胞内カルシウムレスポンスの増強を認めた。この測定には研究経費で購入したFluoroskan Ascent FLを使用した。 次に安定細胞株樹立の為にCHO細胞に両遺伝子を共導入した。数クローンを単離後、継代中に導入遺伝子が欠落するなどのトラブルも生じたが、現在では比較的安定なクローンが得られている。しかしながら、HEK293細胞に一過性に発現させた場合と比較して、フェニレフリンに対する細胞内カルシウムレスポンスが鈍く、測定感度が十分ではないことが問題点となっている。 試験的な実験ではあるが以上の評価系を用いて、これまでに我々が血管弛緩作用を持つアルカロイドとして単離報告した数種類の化合物についてその生物活性を検討した。その結果、いくつかのアルカロイドにおいてα1受容体阻害と推定される抑制作用が認められたが、現在までにTRPC6に直接的に関与する化合物は得られていない。
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