植物で最初に全ゲノムが解読されたシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノム配列に対して、丹念にトリテルペン合成酵素の相同性検索をすると、シロイヌナズナには、同定済みの14種のトリテルペン合成酵素以外に、2種の「不完全なトリテルペン合成酵素」が存在することが判った。一つはイントロンの構造が不完全であり、かつエクソンに終止コドンを含んでいる。他方は他の酵素と比較して長さが半分程度のものである。これらのうち、前者(Locus name: At3g29255)について、分子生物学の手法を駆使して完全型に作り替え、活性の検討を試みた。 シロイヌナズナのゲノムDNAを鋳型にPCRを行い、At3g29255のゲノムDNA断片を得た。プラスミドにサブクローンし、複数個のクローンを得、全配列を決定した。ゲノム情報からこのクローンは12個のイントロンと13個のエクソンからなる。13個のエクソンに対応するPCR用のプライマーを合成し、PCRで生じた誤りを含まないプラスミドDNAを鋳型にしてPCRを行い、13個のエクソンに対応するDNA断片を得た。得られた13個のDNA断片を精製後、精製した13個のDNA及び、N末、及びC末に対応する配列に基づいたプライマーを用いてPCRを行い、各DNA断片を連結して全長に相当するDNA断片を得た。このとき、フレームシフトの解除、終止コドンの解除も、プライマーを適切にデザインすることにより、一気に行った。得られた全長DNA断片をプラスミドベクターにサブクローニングし、塩基配列を決定し、誤りを含まないクローンを用いてラノステロール合成酵素欠損酵母株を形質転換した。現在、得られたクローンの酵素活性を検討中である。
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