研究課題/領域番号 |
25460145
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
野路 征昭 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (80271534)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サイコサポニン生合成 / シトクロムP450 |
研究概要 |
ミシマサイコのサイコサポニン生合成の全容を分子生物学的に解明するために、次世代シークエンサーを用いて、ミシマサイコの根、茎、葉それぞれの部位についてトランスクリプトーム解析を行い、ESTデータベースを作成した。このESTデータベースを検索することで、サイコサポニン生合成に関与すると思われる候補遺伝子を得る事に成功した。 サイコサポニンのアグリコンであるサイコゲニン生合成に関与するシトクロムP450の同定については、根、茎、葉での部位別遺伝子発現パターンから予想された6つの候補遺伝子、及び根特異的に発現していると考えられる5つの候補遺伝子の計11種のミシマサイコ由来の新規シトクロムP450についてcDNAクローニングを行い、その機能を解析した。ミシマサイコのβ-アミリン合成酵素遺伝子を発現させることで、サイコサポニン生合成の基質であるβ-アミリンを生産する酵母で、これらシトクロムP450遺伝子を発現させ、代謝物を解析したところ、β-アミリンを基質とし得るP450は、この内2種でR144792はβ-アミリンの28位の炭素を水酸化し、R197504は28位の炭素をカルボン酸にまで3段階酸化することを明らかにした。この2つのP450は互いのアミノ酸配列の類似性が高いことから、構造の僅かな違いにより反応生成物が異なっていると考えられる。 次にサイコゲニンの配糖体化酵素についてもシトクロムP450と同様の方法で同定を試みた。β-アミリンを基質とすると考えられるUGT73Cサブファミリーと類似性の高い2種のグリコシルトランスフェラーゼcDNAの単離に成功し、現在機能解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サイコゲニン生合成に関与するシトクロムP450の同定のために、これまでミシマサイコより新規シトクロムP450遺伝子を11種単離し、それらの機能解析を行ったが、その中でサイコゲニン生合成に関与すると考えられるものはβ-アミリンの28位の炭素を水酸化するR144792のみであった。 今回の研究期間では、サイコゲニン生合成に関与する他のシトクロムP450を同定することが出来なかった。今回機能解析した10種のシトクロムP450はサイコゲニンの生合成に関与していないとも考えられるが、今回の機能解析法が、β-アミリンを生産する酵母中で、候補のシトクロムP450遺伝子を発現させ、その反応生成物を解析しているため、酵素のβ-アミリンに対する反応性を見ていることになる。しかしながらβ-アミリンからサイコゲニンまでの生合成は数種のシトクロムP450による逐次反応であると予想されるため、例えば、β-アミリンを基質とはしないが、28-水酸化β-アミリンを基質とし、次の反応が起こる場合もあると考えられる。その場合、各種P450の組合せによる活性測定法を新たに試みる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
β-アミリンからサイコゲニンまでの生合成は数種のシトクロムP450による逐次反応であると考えられるため、各種シトクロムP450を組合せた活性測定法を新たに試みる。具体的には、各候補シトクロムP450遺伝子を発現させた酵母よりそれぞれタンパク質を抽出し、それらを試験管内で組合せて活性を測定するin vitro活性測定法を試みる。この測定法が成功すれば、任意の組合せで簡便に活性を測定できると期待される。また、酵母細胞内で複数の外来遺伝子を発現させる事が出来るベクターを用いて、in vivoで各P450を組合わせた活性測定も試みる。さらにESTデータベースを検索することで新たな候補シトクロムP450遺伝子を選択し、機能解析を行うなどして、サイコゲニン生合成に関与する新たなシトクロムP450の同定を目指す。 次にサイコゲニンの配糖体化酵素については、これまでに得られたβ-アミリンを基質とすると考えられるUGT73Cサブファミリーと類似性の高い2種のグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の機能解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回、試薬など研究に用いる消耗品を特に多く購入したが、物品の値引き等があったため、8,074円の次年度使用額が生じた。 次年度使用額が生じたが、額は8,074円と少額のため、特に使用計画に変更などはなく、消耗品代として使用する計画である。
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