研究課題/領域番号 |
25460148
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
中瀬 生彦 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (40432322)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | EGF受容体 / 人工受容体 / コイルドコイル / ヘリックス相互作用 / 二量体化 |
研究概要 |
本研究課題では、生体に存在しないコイルドコイル形成配列で特異的に活性化される人工epidermal growth factor(EGF)受容体システムの構築を目的としており、短鎖のロイシンジッパーペプチドを利用することで、その相互作用による受容体の二量体化及び受容体の活性化を誘導する方法論を創出する。最終的には細胞治療を指向した生体内で利用できる人工受容体システムを構築する。これまで、人工ヘリックス配列2分子をリンカーで繋げたリガンドを調製し、そのペプチドと相互作用する人工ヘリックス配列を融合したEGF受容体を遺伝子工学で細胞膜に構築した。本システムでは、人工EGF受容体への特異的なリガンド結合及び活性化が確認され、細胞応答としてラメリポディア形成や細胞遊走の制御が可能であることを確認している。しかし、本手法の人工受容体活性化には、ペプチドリガンドが10μM程度の濃度が必要であり、生体内での応用の為には更なる効率的な受容体活性化システムの創出が必要であった。そこで、ペプチドリガンドの活性可能を高める為に、細胞膜への集積性を狙った疎水性基(アシル化)を修飾したリガンドペプチドを創製した。その結果、人工受容体の活性化効率が著しく上昇し、ペプチドリガンドが100nMといった低濃度においても効率的に受容体を活性化することに成功した。リンカーで結合させていない疎水性基修飾ヘリックスでは人工受容体の活性化が殆ど誘導されないことから、本方法論における疎水性基及びリンカーの重要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度として、おおむね順調に進展していると判断できる。将来的には細胞治療を指向した人工受容体-リガンドシステムの構築を目指して研究を進展させているが、本年度において研究実績の概要で示した通り、従来法よりも格段に効率性の高い人工リガンド創製に成功している。実際に本システムを生体で使う場合は、更に低濃度で特異的に受容体を活性化できるシステムを創出する必要があると考えられ、引き続きペプチドリガンドの最適化を行う。しかしながら、今回機能化に成功した手法は今後の開発において重要な基礎的知見になることは間違えなく、またEGF受容体以外の人工受容体開発にも役立つことが考えられる。次のステップとして、ペプチドリガンドの最適化とあわせて、今後の研究の推進方策に記載の通り人工受容体の二量体可視化やマウス膵臓細胞等への人工受容体の構築の研究へと展開するが、本研究成果を基盤とした高機能な人工受容体システムの構築を推進していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
高効率に受容体活性化可能なペプチドリガンドの最適化とあわせて、以下の研究を推進する。 (1)人工EGF受容体の二量体化の可視化 細胞膜における人工EGF受容体のリガンドによる二量体化を可視化できるシステムを構築する。このシステムを活用することで、人工リガンドによる受容体の活性化の最適化の指標となり、高精度な人工リガンド-受容体システムを確立するための重要な情報になる。また、in vivoで本システムを使用した時に、動物体内に移植した人工受容体を構築した細胞について、その受容体の二量体化及び活性化情報をin vivo 蛍光イメージングで取得できるといった非常に大きなメリットがある。手法としては、EGF受容体のキナーゼドメインのC末端側に蛍光タンパク質を融合することで、split法及びFRET法で受容体の二量体化を検出するシステムをつくる。 (2)膵臓細胞への人工EGFR安定発現細胞の構築及びインスリン分泌に関する評価 マウス膵臓細胞において、EGF受容体の刺激によって、インスリンが分泌されることが報告されている。そこで本研究では人工EGF受容体を発現させることで、細胞からのインスリン分泌を人工ペプチドリガンドで制御するシステムを構築する。最初は一過性にEGF受容体を発現させた細胞で、そのリガンド刺激によるインスリン分泌に関する評価を行う。人工ペプチドリガンドによる細胞刺激でインスリンの分泌が確認された後、安定的に人工EGF受容体が細胞膜に発現する膵臓細胞を作製する。既存のEGF受容体によるインスリン分泌活性が本システムに影響を及ぼす場合は、EGF受容体のノックアウト細胞も同時に作製した後に、人工EGF受容体の安定発現細胞を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実績の概要に述べたが、本年度の研究で疎水性基を修飾したペプチドリガンドを用いることで、人工受容体の活性化効率の上昇に成功している。しかし、引き続きリガンドの更なる活性化効率性を高める為に、3~6分子型のペプチドリガンドや、リポソーム等のナノマテリアル膜上にペプチドを修飾したリガンドの創製を行っており、次年度において継続的にリガンドを合成及び細胞での活性化評価を行う為に次年度使用を行う。 経費は主にペプチド合成用の有機化学系試薬(アミノ酸、ペプチド合成用レジン、カップリング試薬)や、細胞培養試薬・プラスチック製品(共焦点顕微鏡観察用、フローサイトメトリー実験用)に必要な消耗品購入及び、国内・海外で開催される学会等においての研究成果発表の旅費等に充てる。
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