本研究課題において、人工的に創製されたヘテロなコイルドコイルを形成するロイシンジッパーペプチドを利用し、人工epidermal growth factor receptor(EGFR)の二量体化及び、それに伴う受容体活性化を誘導するシステム構築を目的とする。また本技術を用いて生体内での細胞治療・細胞制御技術に展開する。これまでの研究で、人工ヘリックスペプチドを2分子繋げたリガンドを合成し、そのペプチドリガンドと認識・相互作用する人工ヘリックス配列を細胞外配列に融合したEGFRを遺伝子工学で細胞膜に構築した結果、ペプチドリガンドによる人工EGFRへの特異的な受容体活性化が確認されている。本研究では、さらに機能的・効率的な受容体活性化可能な人工リガンドの開発のため、細胞由来マテリアルである100nm程度のサイズを有する細胞分泌エクソソームを利用し、エクソソーム膜上に人工ヘリックスペプチドの構築を行った。結果として、エクソソーム膜上へのロイシンジッパーペプチドの密度、及び、ペプチドの構築構造の違いによってヒト乳癌細胞上に発現させた人工EGFRの活性化効率に大きく影響を与えることが示された。また、効果的にEGFRの活性化を示す条件によって、EGFRのTyr1173のリン酸化、及び、そのシグナル応答によるアクチン骨格への影響(ラメリポディア形成)の可視化に成功し、人工受容体-リガンドシステムの開発における重要な基盤的知見が得られるに至った。
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