研究課題/領域番号 |
25460151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
伊東 祐二 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (60223195)
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研究分担者 |
有馬 直道 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30175997)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗体ライブラリ / ファージライブラリ / 抗体 / 次世代シークエンサー / 網羅的配列解析 / バイオパンニング |
研究概要 |
ファージディスプレイによる抗体ライブラリ技術は、抗体開発の中心的な技術となっている一方で、ライブラリ構築やバイオパンニングと呼ばれる単離方法に、熟練した技術やノウハウが必要なことから、限られた研究グループの使用に留まっている。本研究は、ヒト抗体ライブラリ技術に、次世代DNAシークエンサーによる網羅的配列解析技術を組み合わせることによる、より短期間で確実な抗体ファージライブラリからのガン細胞特異的抗体の単離システムの構築を目的とした。25年度では、この方法の有用性を試験するため、以下の2点について検討した、 1)肝ガン患者由来抗体ライブラリから得られた抗ルテラン抗体の網羅的配列解析 ルテラン組み換え分子に対するパンニングにおける、網羅的配列解析の有用性を検討した。1回目のパンニングの前後で、次世代シークエンサーによる解析を行ったところ、全部で25クローン(種類として4種類)のクローンが同定された。通常の単離手法では、7クローン(CDRの相同性から種類としては2種類)しか得られておらず、網羅的配列解析手法が、迅速かつ、多様な特異抗体の取得に極めて有用であることが分かった。 (2)肝ガン患者由来抗体ライブラリからのHep-G2細胞特異的な抗体ファージの分離と網羅的配列解析 上記で検証した方法を、細胞パンニングによる特異的抗体の特定に応用した。肝ガン患者由来の抗体ライブラリを、SK-BR3(乳がん細胞株)で2回の吸収操作を行い、次にHEP-G2細胞(肝ガン細胞株)と反応させ、結合した抗体ファージを回収した。この細胞パンニング前後でのクローンの網羅的配列解析を行ったところ、配列の比較から、8種類以上の多様な結合抗体クローン候補の同定を達成した。 現在、これらの抗体クローンの結合活性の評価を通して、実際に、この手法が、迅速なガン細胞特異的抗体の同定法として利用できるかどうか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の予定では、(3)健常人由来抗体ライブラリからのS1T細胞特異的な抗体ファージの分離と網羅的配列解析 についても実施を予定していたが、この項目については、健常人由来抗体ライブラリではなく、白血病患者由来抗体ライブラリを用いた、白血病細胞株(S1T細胞)に対する抗体の単離に一部変更した。ライブラリの遺伝子ソースなどの準備に手間取ったことから、本年度は、この項目についてはライブラリ構築までは行ったものの、解析の実施はできなかった。しかしながら、本年度の研究目標である、網羅的配列解析の有用性については、上記(1)と(2)によって、十分に達成できたことから、本年度の評価は、おおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26、27年度の予定としては、得られた抗体のHEP-G2細胞並びにS1T細胞への結合活性を確認するとともに、予定していた以下の臨床検体サンプルへの応用を検討していく。 (1)HEP-G2細胞への結合活性が確認された抗体について、肝ガンの臨床検体切片に対する反応性を検討する。研究協力者のHui博士とは、既に、本研究に関わる合意がなされており、得られたクローンを、シンガポールNCCに送付して、患者のガン組織切片を用いて染色実験を行う。 (2)S1T細胞への結合活性が確認された抗体について、ATL患者の臨床検体に対する反応性をフローサイトメータを用いて検討する。分担研究者の有馬博士とは、本研究に関わる合意がなされており、倫理委員会でも承認がすでに得られている。 以上の検討を通して、本方法が、ヒト抗体ライブラリからの癌細胞特異的抗体の単離において、特に、迅速かつ多様な抗体を同定する上で優れた方法であることを実証し、今後の抗体医薬開発に貢献できる技術を確立する。
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