研究課題
本研究は、ヒト抗体ライブラリ技術に、次世代DNAシークエンサーによる網羅的配列解析技術を組み合わせることによる、より短期間で確実な抗体ファージライブラリからのガン細胞特異的抗体の単離システムの構築を目的としている。25年度での(1)肝ガン患者由来抗体ライブラリから得られた抗ルテラン抗体の網羅的配列解析と(2)肝ガン患者由来抗体ライブラリからのHep-G2細胞特異的な抗体ファージの分離と網羅的配列解析の成果を受け、26年度では、以下の(3)(4)の項目を推進した。(3)抗ルテラン抗体クローンの特異性の解析並びに抗体調製:(1)でルテランに対するバイオパンニング後に得られたファージ上の抗体の網羅的配列解析を行ったところ、通常のスクリーニングによって得られた抗ルテラン抗体クローン(2種類)以外に、いくつかの特異的候補抗体配列が得られた。そこで、得られたVH配列のCDR3部分を基に設計したプライマーを用いて、全単鎖Fv遺伝子をPCRにて再構築を行った。これらの遺伝子をファージベクターに組み込み、ルテランに対する結合特異性を確認したところ、1つのクローンでルテランに対する結合特異性が見られた。(4)抗Hep-G2細胞特異的な抗体クローンの特異性の解析:(2)でHep-G2細胞に対するバイオパンニング後に得られたファージ上の抗体の網羅的VH配列解析を行ったところ、特異的と思われるクローンが20種類以上見つかった。これらについて、元の単鎖Fv遺伝子を再構築し、ファージに組み込み、Hep-G2に対する結合活性を細胞ELISAで確認したところ、約半数で、Hep-G2に対する結合活性が確認された。
3: やや遅れている
申請時の予定では、健常人由来抗体ライブラリからのS1T細胞特異的な抗体ファージの分離と網羅的配列解析についても実施を予定していたが、Hep-G2に対しする細胞パンニングにおいて、予想外に多くの結合クローンが得られたことから、本研究では、標的のガン細胞としては肝ガン細胞に絞ることにした。26年度の研究目標である、得られた抗体の特異性の確認は、十分に達成されたが、もう一つの細胞パンニングから得られた抗体クローンの抗原の同定には至っていないため、本年度の評価を、やや遅れているとした。
平成27年度の予定としては、得られた抗体をタンパク質として発現させ、結合活性の再確認と共に、標的とする抗原を含めたエピトープ解析を行っていく予定である。即ち、以下の項目を推進する(1)HEP-G2細胞への結合活性が確認された単鎖Fv抗体について、大腸菌並びに、Brevibacillus brevisでの発現を行い、フローサイトメータによる結合並びに標的抗原の同定を含めたエピトープ解析に必要な抗体タンパク質を調製する。(2)得られた抗体タンパク質を用いて、Western blotting解析並びに、マススペクトル解析により、抗原を同定する。(3)得られた抗体タンパク質を用いて、肝ガン患者の組織切片の免疫染色を行い、特異的な免疫染色に使用できる抗体かどうかの評価を行う。以上の検討を通して、本方法が、ヒト抗体ライブラリからの癌細胞特異的抗体の単離において、特に、迅速かつ多様な抗体を同定する上で優れた方法であることを実証し、今後の抗体医薬開発に貢献する。
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Protein Expression and Purification
巻: 105 ページ: 23-32
10.1016/j.pep.2014.09.017
Journal of Biochemistry
巻: 157 ページ: 印刷中
10.1093/jb/mvv038
http://kuris.cc.kagoshima-u.ac.jp/705524.html
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~yito/