研究課題
本研究は、ヒト抗体ライブラリ技術に、次世代DNAシークエンサー(NGS)による網羅的配列解析技術を組み合わせることによる、より短期間で確実な抗体ファージライブラリからのガン細胞特異的抗体の単離システムの構築を目的としている。25、26年度での成果を受け、27年度では、(1)単離同定した抗ルテラン抗体のガン細胞に対する結合活性並びにエピトープ解析を行い、(2)抗Hep-G2細胞特異的な抗体クローンの標的分子の解析、(3)新しいマーカーとしてFGF-RL1に対する抗体のNGS網羅的配列解析手法による単離を行い、本方法の有用性を評価した。具体的には、肝臓ガン患者由来の単鎖Fv抗体ライブラリーから、NGS網羅的配列解析手法により同定した3種の抗ルテラン抗体のうち2つについて、動物細胞での発現を行った。これらの抗ルテラン抗体は、肝ガン細胞株だけでなく、乳ガン細胞株など、比較的広いガン株に結合活性を示すことから、ガン細胞に対する新しい抗体医薬の候補として、特許申請を行った。一方、26年度にて、ガン細胞株HEP-G2に対して複数の結合抗体クローンを単離したが、それらの単鎖Fv抗体の大腸菌での発現がうまくいかず、予定していた抗体クローンの抗原同定を達成できなった。このような中で、新たながん細胞の抗原マーカーとしてFGF-RL1を標的に、NGS手法を用いた新規の抗体の単離を試み、4種の抗原特異的なクローンを単離し、scFv-Fcフォーマットでの結合活性の確認を行うことに成功した。以上の結果は、抗体ファージライブラリからの特異抗体の単離・同定に、NGSを用いた網羅的配列解析手法が、極めて効率的で有用なことを示している。本研究では、達成することができなかった、細胞を標的としたパンニングについても、今後は、フローサイトメータを用いた新しい手法の導入により、本手法の有用性を示していきたい。
すべて 2016 2015
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