研究課題/領域番号 |
25460153
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
大場 基 昭和大学, 腫瘍分子生物学研究所, 講師 (70297018)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子標的治療 / PKC / 炎症性疾患 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
PKCetaを分子標的とし、その発現や活性を阻害することで、炎症性皮膚疾患を快癒させうる新規治療法の開発を目標とした。昨年度までに、PKCeta特異的siRNAをアトピーモデルマウスNc/Nga背部及び外耳皮膚に、レシチン様溶剤や皮膚浸透性ペプチドを使用して導入し、アトピー用皮膚炎の軽快と掻痒行動の低下等を確認した。今年度は、第一にヒトへの応用を目指し、効果的かつ特異的なPKCeta発現抑制活性を有するsiRNA配列の探索を行った。その結果、PKCetaが高発現するヒト肺腺がん細胞株や不死化ケラチノサイトHacaTにおいて、PKCetamRNAレベルを80~95%程度抑制できる配列を見出した。これらの成果は、ヒトPKCeta遺伝子発現阻害siRNA及びそれを含む医薬品 (特願2015-206380)として特許申請を行った。第2に、PKCetaの偽基質配列を用いたPKCetaの活性阻害を試みた。特に偽基質配列に3~11個のポリアルギニンシグナルを付加したペプチド誘導体や、PKCetaの細胞内局在部位である小胞体への移動シグナル等を付加したペプチドをin vitroで合成し、その効果を検討した。しかしながら、既存のミリストイル基付加偽基質ペプチドと比較して、その導入効果及びPKCeta活性抑制効果は低く、有効性は確認できなかった。第三に、全身性慢性炎症性疾患への応用を検討するために、動脈硬化モデルマウス:ApoEノックアウトマウス(ApoE KO)への効果を検討した。更に、PKCetaノックアウトマウス(prkch KO)とのダブルノックアウトマウスを両マウスの交配により作成し、動脈硬化に及ぼすPKCetaの作用をマウス個体レベルで検討することにした。しかしながらApoE/prkchダブルノックアウトマウスの作成が非常に困難であり、その作成・維持に想定以上の時間を要した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
核酸医薬品を用いた皮膚炎症性疾患治療への試みは、想定通りに遂行できたが、本年度の主たる目的であった全身性の炎症性疾患への治療適用実験が予定通りに実行できなかった。その原因として、モデルマウスとして使用したApoEマウスやPKCetaノックアウトマウス、及びそれらのダブルノックアウトマウスの作成・維持が想定外に困難であり、十分な検討が加えられなかったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
PKCetaを標的とした核酸医薬品の臨床応用を目指し、より高効率なPKCeta発現抑制を実現するために、既存のsiRNA修飾(2'-O-methyl化, ホスホロチオネート化)に加え、疎水性分子付加PKCeta siRNAの効果も併せて検討する。 また、全身性慢性炎症性疾患への応用が可能か否か、そのモデル実験としてApoE/prkchノックアウトマウスを用いた解析を行う。今年度は、十分な数の同ノックアウトマウスを維持することでPKCeta欠損による動脈硬化に及ぼす効果を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は平成27年度が最終年度であったが、全身性疾患に対する検討が想定外の理由(実験用マウスの作成・維持の困難)により遅滞したため、その実験を28年度に行うべく補助期間延長申請書を平成28年2月16日に提出し、受理され、使用残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、上記マウスの安定的に維持することで、PKCeta発現阻害による動脈硬化マウスへに及ぼす影響を検討する。それらの検討に加え、本研究課題から得られた他の知見を含めて、特許申請・論文作成を行う。未使用額はそれらの経費に充当したいと考えている。
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