研究概要 |
生物活性化合物の部分構造として広く存在するベンズアミド(あるいはアニリド)構造には、軸性キラリティーが潜在している。本研究課題は、このようなアミド型軸不斉が生物活性の発現において重要な役割を果たしていることを明らかにする。また、軸性キラリティーの制御のための方法論を確立する。これらにより、医薬品候補化合物のシーズを大学の研究室から創出することを目的とし、具体的には以下の3項目に取り組んでいる。(1) 生物活性化合物におけるアミド軸不斉の存在の表出と立体化学の解明、(2) アミド軸不斉を活かした新規生物活性物質の創製、(3)アミド軸不斉の制御のための方法論の確立。 このような方針のもとに研究を進め、今回ベンゾラクタム系化合物のひとつである、1,5-benzothiazepin-4-oneのS-oxide体について、軸不斉と中心不斉(1S*)の2タイプの不斉の相関を詳細に検討し、立体化学、物理化学的性質、立体選択的な酸化反応および変換反応などを明らかにした(J. Org. Chem. 2013, 78, 6264-6270)。現在、これらの知見をもとにして、1,5-benzothiazepin-4-one S-oxide骨格を基本とするバソプレッシンV1,V2受容体拮抗薬を目指して合成を検討中である。また、アミド構造の構造等価体であるスルホンアミド構造をもつ化合物へも研究を展開し、両系統の物理化学的性質などを比較検討し、興味深い知見を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果として、関連学会(日本薬学会年会・同関東支部大会・反応と合成のシンポシンポジウム・メディシナルケミストリーシンポジウムなど)で多数口頭発表を行っており、論文誌にも投稿し公表されている(J. Org. Chem. 2013, 78, 6264-6270)。現在、さらに一報は審査段階にあり、数報を投稿準備中である。 本研究を含めて、申請者らの一連の研究は、最近の総説(中員環化合物の動的立体化学関するもの:Ramig, K. Tetrahedron 2013, 69, 10783-10795; 軸不斉化合物に関するもの:Zask, Aら Chirality 2013, 25, 265-274.) にも多数引用されており、創薬研究に役立つ化学として注目・評価されている。
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