研究実績の概要 |
生物活性化合物の部分構造として広く存在するベンズアミド(あるいはアニリド)構造には、軸性キラリティーが潜在している。このようなアミド型軸不斉が生物活性の発現において重要な役割を果たしていることを明らかにし、最終的には、新たな生物活性物質、医薬品シードの創製をめざすものである。この周辺研究を総説として公表(有機合成化学協会誌、2016, 74, 56-68)するとともに、今年度は、生物活性化合物の基本骨格として頻用されているベンゼン環縮合含窒素7員環構造を持つ化合物について、以下の2項目に取り組んだ。(1) N-ベンゾイル-ベンゾアゼピン骨格の立体化学の再解明、 (2) N-ベンゾイル-ベンゾアゼピン誘導体のバソプレシン受容体拮抗作用の活性発現構造の解明。 本年度の主要な成果は以下の2点である。(1) については、N-ベンゾイル-ベンゾアゼピン骨格の立体構造を詳細に検討した。その結果、従来報告されていた立体化学(M. Qadir et al., J. Org. Chem. 2005, 70, 1545ー1551)に誤りがあることを見出し、その訂正をするとともに、本骨格のもつ特異な立体化学を明らかにした(J. Org. Chem., 2016, 81, 3136&ー3148)。(2)については、(1)および前年度に明らかにしたN-ベンゾイル-1,5-ベンゾチアジンおよびそのS-オキシド誘導体のバソプレシン受容体拮抗作用(J. Med. Chem., 2015, 58, 3268ー3273)の継続として、N-ベンゾイル-5-ヒドロキシ-1-ベンゾアゼピン類を合成し、バソプレシン受容体拮抗作用を調べ、活性発現に寄与する立体化学を明らかにした(論文投稿準備中)。
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