研究実績の概要 |
生体内機能性物質の部分構造をバイオイソスターで置換する手法は、新規な生物活性物質を見出す上で有用な方法の一つである。ジペプチドの加水分解遷移状態をミミックした構造は、基質とプロテアーゼ活性中心との親和性に大きく寄与することが期待できる。このことから、ペプチド性プロテアーゼ阻害剤の創製研究において、ジペプチドの加水分解遷移状態のミミック構造の設計・合成・機能解析は極めて重要となる。 本年度は、以上の基本方針に従ってホモダイマー構造を有するHIVプロテアーゼに対する阻害剤の創製を目的として、軸対象性のアミノビスホスフィン酸誘導体の簡易合成法の開発と機能解析研究を展開した。本研究については、光学活性体の合成に関する新しい知見と血漿アルブミンに対する親和性などに関する機能解析結果がそれぞれ得られたので、国際誌2報に発表した。 一方、分子内にエステル構造を有するセリンプロテアーゼ阻害剤の構造活性相関研究において、エステル構造をホスホン酸エステル構造に化学修飾すると、阻害形式が競合阻害から非競合阻害に変化し、さらにセリンプロテアーゼのうちトロンビンに対する阻害選択性が大きく向上する新しい知見が見出された。本研究については、研究論文としてまとめ、国際誌に投稿準備中である。以上の研究に加えて、新しい複素環化合物の合成法についても検討し、多置換[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]キノリン類の新規合成法の開発に成功した。本複素環化合物は創薬テンプレートとしての有用性を内在しており、リン酸ミミック構造とのハイブリッド分子は有用な生物活性化合物の創製に活用できると期待される。
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