研究実績の概要 |
生体内機能性物質の部分構造をバイオイソスターで置換する手法は、新規な生物活性物質を見出す上で有用な方法の一つである。本研究は、ホスホニル基およびホスフィニル基をリン酸エステルの等価構造(ミミック)あるいはカルボン酸のバイオイソスターとして活用し、新規な生物活性化合物の創製を目的に企画された。平成27年度は、以下の研究を展開した。 1-ヒドロキ-1,1-ビスホスホン酸誘導体は、カルシュムイオンのキレート能を有することから、骨代謝の制御に有効なことが知られている。本年度は、新たな生物活性を期待して、1-ヒドロキ-1,1-ビスホスホン酸誘導体のホスフィン酸アナログの合成と金属イオンとの錯体形成能を評価し、その結果を国際誌で発表した。また、α位およびα’位にヒドロキシ基を有するホスフィン酸からオキセタンで配座固定されたホスフィン酸誘導体の立体選択的合成法を見出し、国際誌で発表した。一方、分子内にエステル構造を有するセリンプロテアーゼ阻害剤の構造活性相関研究において、カルボン酸エステル構造をホスホン酸エステル構造に化学修飾すると、阻害形式が競合阻害から非競合阻害に変化し、さらにセリンプロテアーゼのうちトロンビンに対する阻害選択性が大きく向上する新しい知見が見出された。本結果については、研究論文としてまとめ、国際誌で発表した。 以上の研究に加えて、新しい複素環化合物の合成法についても検討し、多置換[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]キノリン類の新規合成法の開発に成功した。本複素環化合物は創薬テンプレートとしての有用性を内在しており、リン酸ミミック構造とのハイブリッド分子は有用な生物活性化合物の創製に活用できると期待される。
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