研究課題/領域番号 |
25460163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
日高 興士 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30445960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マラリア / HIV / 治療薬 / プロテアーゼ阻害剤 / 分子設計 / プラスメプシン |
研究概要 |
新規マラリア治療薬を開発するために、標的のマラリア原虫プラスメプシンに 対してアミノ末端が基質とは逆方向に結合するアロフェニルノルスタチン(Apns)含有阻害剤を設計し、有望な化合物を獲得した。 (1) Plm IとKNI-10006のX線共結晶構造より、S2’ポケットから溶媒水に伸びる2,6-ジメチルフェノキシアセチル基は更に伸長させても結合に影響しにくいと考え、4-位を種々変換した誘導体を合成した。プラスメプシンが局在する酸性食胞へ集積させるために2-アミノエチルアミノ基の塩基性補助基を導入したところ、優れた抗マラリア活性を示した。しかし、誘導体のクロロキン感受性と耐性の熱帯熱マラリア原虫を比較すると、耐性原虫では増殖阻害活性が9倍近く減弱した。この結果を2-アミノエチルアミノ基がクロロキン構造の一部に類似するために薬剤耐性機構に影響を受けたと考え、2-アミノエチルアミノ基を回避した塩基性補助基を導入した。 (2) 合成した誘導体は、Plm IIに対してKi値が1~22 nMの強い阻害活性を示した。その中にEC50値が0.26 μMと良好な抗マラリア活性を示すものを同定した。クロロキン耐性原虫に対しては、活性の減弱は1~3.6倍で穏やかで、活性がクロロキン感受性原虫を上回る誘導体も見られた。この結果より、本研究を実施して得られた阻害剤はクロロキン耐性機序を回避でき、薬剤耐性マラリア原虫に有効な薬剤となる可能性がある。 (3) KNI-10006にアミノカプロン酸リンカーを介してビオチン結合させたPlm プローブを合成した。このプローブはリコンビナントのHIVプロテアーゼに対して強い阻害活性を維持し、ストレプトアビジンカラムを用いてアフィニティー精製ができたことから、Plmへの応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を実施して、現在までに設計したプラスメプシン阻害剤の中に、nMレベルの強い酵素阻害活性を示し、良好な抗マラリア活性を示す化合物を獲得している。中にはEC50値が0.26 μMを示す誘導体も見られ、これまでに報告されたプラスメプシン阻害剤の中でも抗マラリア活性が強いと言える。また、クロロキン耐性原虫に対して同等またはそれ以上の増殖阻害活性を持つ誘導体も同定できたことから、薬剤耐性の問題を克服できた点で非常に有望である。更に、ビオチン結合型阻害剤を合成し、それらが標的結合能力において機能することを確認できた。初年度に計画していた塩基性をもたない補助基を有する誘導体等の合成が一部遅れているが、薬剤耐性マラリア原虫に対して有効な阻害剤を同定するなどの十分な成果を得ており、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に検討できなかった塩基性をもたない補助基を有する誘導体や他のプローブの合成については、本年度に優先的に実施する。また、得られた抗マラリア活性の結果の中に、活性が大きく低下したものや予想外に優れる化合物が得られたことから、これらの誘導体とPlmとの複合体の結合モデルを構築し、阻害剤設計にフィードバックすることにより、論理的な構造最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
残金の979円については、消耗品の購入を検討したが金額が足りなかったため、次年度に使用することにした。 次年度使用額の979円は、次年度分と合わせて3,175円の消耗品の購入に使用する。
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