研究実績の概要 |
新規マラリア治療薬を開発するために、マラリア原虫固有のプラスメプシンを標的としてアミノ末端が基質とは逆方向に結合する阻害剤を合成し、比較検討として順方向に結合するペプスタチン誘導体を合成した。 (1) プラスメプシンIおよびHAPとのKNI-10006との共結晶構造では、2,6-ジメチルフェノキシ基は酵素ポケットの端に位置しており、補助基を伸長しても酵素蘇我活性に影響しにくいと考えた。そこで、フェノキシ基の4-位に置換基を導入した誘導体を種々合成した。また、これまでに2-アミノエチルアミノ基の塩基性補助基を導入するとクロロキン耐性原虫に対して増殖阻害活性が減弱したことから、2-アミノエチルアミノ構造を持たない補助基の導入を行った。これらのプラスメプシン阻害活性および抗マラリア活性の測定は検討中である。 (3) フェノキシ基の4-位に数個のアミノカプロン酸リンカーを伸長させてビオチンを結合させた阻害剤プローブを合成したところ、アミノカプロン酸が少ないと酵素阻害活性およびアフィニティー精製におけるタンパク回収率が顕著に下がることが分かった。この結果を踏まえてビオチンを直接結合させたプローブを開発した。本プローブは強い酵素阻害活性を示すがストレプトアビジンを添加していくと阻害活性がほぼ消失することが分かった。本結果は阻害剤を結合させた後に取り除かれ、阻害剤のON-OFFを制御できたことを示唆しており、阻害剤の全く新しい利用法として応用できると期待される。
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