研究実績の概要 |
プラスミン(PL)は血栓除去に関わる線溶系の主要因子として知られている。近年我々は、出血性疾患のみならず、炎症や癌の増殖や転移などの病態におけるPLの役割に注目ている。すなわち、PL阻害剤を設計・合成して、得られた阻害剤を使用して病態時のPLの役割を解明し、臨床利用へ応用することを目指している。 この観点から、東京大学医科学研究所・服部准教授との共同研究をすすめ、急性移植片対宿主疾患(GVHD)モデルマウス【Sato, et al., Leukemia (2015) 】や潰瘍性大腸炎モデルマウスにおけるPL阻害剤の効果を検討した【Munakata, et al., Gastroenterology (2015生存率または病態の改善が見られ、特異的PL阻害剤は上記病態におけるPLの役割の解明や、病態の改善に有用であることを示すことができた。 上記実験ではPL阻害剤として以前我々が開発したYO-2を使用した。本年は、阻害活性と溶解性を改善することを目的として、YO-2分子中のオクチルアミド(OA)分子のアルキル直鎖(オクチル)に酸素を導入し、酸素の導入位置を変換した。さらにアミド結合をエステル結合に変換した。これら変換により溶解性は改善されたが、阻害活性は低下し、YO-2より強い阻害活性を示す化合物は得られなかった【Tsuda, et al, Peptide Science 2014 (2015)】。次に、アルキル直鎖(オクチル)をさらに伸張し、その先端にTyr, Lys, Alaを結合した化合物群を合成した。アルキル基を伸ばすと阻害効果が上昇し、21原子数まで伸ばし、その先端にTyrを結合した化合物は、YO-2より強いPL阻害活性(IC50 = 0.19 μM)を示した。
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