研究実績の概要 |
プラスミン(PL)は線溶系の主要因子として機能している。PLはフィブリン塊以外のタンパク質にも作用し、MMPsを活性化してガンの浸潤や転移、さらに炎症を促進していると考えられている。我々は順天堂大学医学部・服部准教授との共同研究により、PL阻害剤が炎症性疾患治療薬として有望であることを示してきた。 今年度はPL阻害剤として我々が開発したYO-2を基盤構造として、さらに阻害活性を向上させることを目的として、YO-2分子中のアルキル直鎖(オクチル)をω―アミノ酸に変換した。これら変換により疎水性が上昇し、それにともない阻害活性も向上し(IC50=0.17 μM)、YO-2より3倍程度強い阻害活性を示す化合物が得られた(化合物1)。しかし、リンカーの原子数が24となるとIC50値が100 μM以上となり(化合物2)、長すぎるアルキル鎖は許容されないことが示された【Tsuda et al, Peptide Science 2015 (2016)】。 次に、YO-2分子中のトラネキサム酸(Tra)の1)シクロヘキサン環をベンゼン環へ置換し、2) アミノ基の除去を試みた。これら化合物のうち、P1残基としてTraの換わりにアミノメチル安息香酸を導入した化合物 (3) は、YO-2には及ばないながら最も強力なPL阻害 (IC50=0.92 μM) を示した。しかし、アミノ基をもたない各種クロロチオフェンカルボン酸等を導入した化合物は、1,000 μMでもPLを阻害しなかった。ミクロプラスミンとYO-2およびクロロチオフェンカルボン酸を導入した化合物 (4) の相互作用をモデリング実験により比較した。YO-2のTraのアミノ基はAsp735の近傍にあり、一方化合物 (4) はAsp735と相互作用せず、またFXaでみられたクロロ原子のTyr774との相互作用もみられなかった。クロロ原子をもっとS1ポケットの奥まで挿入するデザインが必要であることが示唆された 【津田ら、日本薬学会136年会、横浜】。
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