研究課題/領域番号 |
25460165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東 伸昭 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40302616)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物・感染症学 / 細胞外マトリックス / 炎症 / ヘパラナーゼ / マスト細胞 / 好中球 / アレルギー / ケモカイン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ヘパラナーゼの機能を生体内で抑制することにより炎症病態の進行が抑制されるか否かについて、またその抑制機構について検討している。炎症局所への好中球の浸潤を特徴とする炎症モデルについて、ヘパラナーゼ阻害物質の炎症抑制効果を検証するとともに、その抑制機構をin vitro実験系で解析した。 空気嚢炎症モデル、腹膜炎モデルにおいてヘパラナーゼ阻害物質heparastatin(SF4)投与による炎症抑制効果を検討した。空気嚢炎症モデルでは浸潤細胞数の有意な減少が認められた。阻害物質投与群と対照群の間で、好中球の浸潤を誘導するケモカインKC、MIP-2の局所産生量には有意な差がなかった。MCP-1、TNF alphaの産生量は阻害物質投与群で有意に低かった。腹膜炎モデルではheparastatin(SF4)投与による炎症抑制効果は認められなかった。骨髄細胞よりGr1陽性の骨髄由来好中球を分離し、この細胞可溶化物のヘパラン硫酸分解活性をin vitroで測定した。ウシ内皮細胞に由来する[35S]放射標識基底膜を基質に用いると、可溶化物によって放射標識ヘパラン硫酸の低分子量断片が培養上清中に放出された。この放出はheparastatin(SF4)存在下で、もしくは可溶化物中のヘパラナーゼを抗ヘパラナーゼ単クローン抗体で吸収することによりほぼ完全に消失した。 以上より、空気嚢炎症モデルにおいて、ヘパラナーゼが好中球の細胞浸潤に関与することが示された。その機構として好中球由来のヘパラナーゼによる基底膜ヘパラン硫酸の分解の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の遂行に加えて、現在研究科内共用機器センターの運営に携わっている。平成27年度に文部科学省の補助金で取り組んだプロジェクトが終了するのに伴い、センター運営の更新の検討を要した。他大学との合同申請を進めるにあたり、人員配置・申請内容確定・運営方法の統一化などの打ち合わせ業務が頻繁に生じ、当該研究計画に対して実際の進行が著しく遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
ヘパラナーゼ阻害物質による炎症抑制作用の詳細な機構をあきらかにしてゆく。またマスト細胞のもつ炎症性メディエーターの再蓄積を支える分子基盤を解明してゆく。 空気嚢炎症モデルと腹膜炎モデルの違いの一つは、空気嚢を形成する間質の存在である。炎症時におけるこの間質の変化について、ケモカイン産生・浸潤細胞に対するバリア能の両面から検討することにより、ヘパラナーゼ阻害物質による炎症抑制機構をさらに明らかにしてゆく。 in vitroの実験系ではマスト細胞の脱顆粒が一過的に生じる一方、in vivoの場ではマスト細胞は繰り返しメディエータを産生している。このような持続的なメディエータ産生を可能にする分子機構はあまり着目されてこなかった。マスト細胞が外に放出されたメディエータを取り込んで再利用する可能性を仮定し、顆粒内ヘパリンとヘパラナーゼがこの「メディエータの再利用」に果たす役割を検討してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は本研究課題の遂行に加えて、現在研究科内共用機器センターの運営に携わっている。平成27年度に文部科学省の補助金で取り組んだプロジェクトが終了するのに伴い、センター運営の更新の検討を要した。他大学との合同申請を進めるにあたり、人員配置・申請内容確定・運営方法の統一化などの打ち合わせ業務が頻繁に生じ、当該研究計画に対して実際の進行が著しく遅延した。
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次年度使用額の使用計画 |
本課題の最後の1年では、ヘパラナーゼ阻害物質による炎症抑制機構を明らかにするとともに、マスト細胞のもつ炎症性メディエータの再蓄積を支える分子基盤を解明する。研究の遂行にあたり、炎症モデルとなる実験動物、抗体、細胞培養器具と試薬、サイトカイン産生を検出するELISAキット、等の購入に科研費を充当する。
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