研究課題/領域番号 |
25460166
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
神林 康弘 金沢大学, 医学系, 講師 (20345630)
|
研究分担者 |
中村 裕之 金沢大学, 医学系, 教授 (30231476)
人見 嘉哲 金沢大学, 医学系, 准教授 (70231545) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 多環芳香族炭化水素類 / 慢性咳嗽 / 大気汚染 / アレルギー / 咳 |
研究実績の概要 |
大気粉塵中の多環芳香族炭化水素類の慢性咳嗽患者の症状への影響を検討した。 今後の解析に用いるために、2014年4~6月、および、11月~2015年3月まで、毎日24時間大気粉塵を捕集し、その中に含まれるた多環芳香族炭化水素類の分析を行った。また、慢性咳嗽患者や鼻茸や花粉症患者のリクルートを行い、アレルギー日記をつけてもらった。これらのデータを今まで収集してきたデータと合わせて、今後解析する。 2011年1月~6月の大気粉塵中多環芳香族炭化水素類(PAH)の慢性咳嗽(気管支喘息、咳喘息、アトピー咳)患者の咳症状との関連を一般化推定方程式(Generalized Estimation Equation: GEE)を用いて解析した。咳症状は、その日のうちに1度でも咳をしたら症状ありとし、症状ありかなしかで評価した。多環芳香族炭化水素類として、フルオランテン、ピレン、クリセン、ベンツ[b]フルオランテン、ベンツ[k]フルオランテン、ベンツ[a]ピレンを用いた。各PAH、または、PAHの合計を解析に用いた。 慢性咳嗽患者の咳症状は、ラグ2日で、ピレン、クリセン、ベンツ[b]フルオランテン、ベンツ[k]フルオランテン、ベンツ[a]ピレンと関連していた。年齢、性、気温、湿度で補正した結果である。この結果は、気管支喘息の有無で患者を分けた場合、気管支喘息でない患者で認められた。PAHもラグ2日で、慢性咳嗽患者の咳症状に関連していた。これも、気管支喘息でない患者にのみ認められた。 血中総IgE(250 IU/ml)で群分けした場合、ラグ2日で、総IgE濃度が低い群でPAHは咳症状と関連していた。血中IgE濃度が高い場合、アレルギーによる影響が強く、多環芳香族炭化水素類の影響を受けにくいことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大気粉塵の捕集と多環芳香族炭化水素類の分析は順調に進んでいる。また、一般化推定方程式を用いた解析で、多環芳香族炭化水素類が慢性咳嗽患者の咳症状に関連することを示すことができた。また、個々の多環芳香族炭化水素類も慢性咳嗽患者の咳症状に関連することも示せた。 この関連は気管支喘息以外の慢性咳嗽患者で認められることも示した。また、血中総IgE濃度の低い慢性咳嗽患者の咳症状にPAHが関連することも分かり、多環芳香増炭化水素類が咳症状に影響を与えるのは、アレルギー反応の低い慢性咳嗽患者であることも示すことができた。 しかし、もう1つのテーマである好酸球培養細胞を用いて、多感芳香族炭化水素類が関与するアレルギー疾患の悪化に酸化ストレスが関連することを検討する研究が進んでいない状況である。このため、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、大気粉塵の捕集、多環芳香族炭化水素類の分析、患者のリクルートを行う。具体的には、11月~翌年6月まで、毎日24時間大気粉塵を捕集する。捕集した大気粉塵量の測定と、大気粉塵中多環芳香族炭化水素類の分析を行う。リクルートした慢性咳嗽患者や鼻茸患者や花粉症患者にアレルギー日記の記入を依頼する。 ベトナムのハイフォン(Hai Phong)大学でも同様の研究を開始する予定である。今年度はその具体的な計画を立て、実行する。 引き続き、2011年1月~6月のデータを用いて、慢性咳嗽患者の症状と多環芳香族炭化水素類の関連を調べる。また、2014年度までのデータを全て用いて解析し、慢性咳嗽患者の症状への多環芳香族炭化水素類の影響について明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新しい共同大学院の立ち上げや、講義が30コマ程度あったことや、10以上の委員を受け持ったり、学術総会の事務局長など多くの仕事があり、実験計画にあった好酸球培養細胞を用いた多環芳香族炭化水素類によるアレルギー疾患の悪化に酸化ストレスが関与しているか検討する実験を行えなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
大気粉塵の捕集や多環芳香族炭化水素類の分析に関する消耗品を中心に使用する。また、成果の公表のために使用する。ハイフォン大学との共同研究の立ち上げに必要な消耗品の購入にも使用する。
|