研究課題/領域番号 |
25460168
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
白崎 哲哉 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (30264047)
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研究分担者 |
副田 二三夫 熊本大学, その他の研究科, 助教 (10336216)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 母仔隔離 / 聴覚エンリッチ環境 / 行動試験 / 環境要因 |
研究実績の概要 |
まず、転任先での動物飼育・行動実験環境の整備を進めた。また、母仔隔離により不安レベルが低下することをオープンフィールド試験で以前見出していた。不安にも種類があるため、強迫性障害のモデルと考えられているガラス玉覆い隠し行動試験を用い、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が効かないタイプの不安レベルに対する影響を観察した。しかし、実験に用いているウィスター系ラットにおいて、既報とは異なり、無処置動物でさえガラス玉に対して全く不安を示さなかった。同系ラットを用いた既報も参考にしながらガラス玉のサイズや色、床敷きの高さ、フィールドの明るさ等実験条件を変えて検討を重ねたが、改善されなかった。ICRマウスでは問題なく結果を得た経験もあり、手法に大きな欠陥はないはずであるが、無処置群でガラス玉を隠さない理由はわからなかった。そこで、続いてホールボード試験により不安レベルの解析を行った。その結果、統計解析中ではあるが、無処置群、母仔隔離群、聴覚エンリッチ環境内母仔隔離群の3群間に有意な差は見られない傾向にある。本試験に関して、無処置群でもフィールドの中心部を平気で横切る例が多くみられ、前任校でのオープンフィールド試験の結果と違いがみられた。前任校では床・壁とも黒色のフィールドであったのに対し、本学ではいずれも灰色である。この点が影響しているかもしれない。 超音波発声を指標としたストレス度の測定は難航している。そこで、コルチコステロンレベルを生化学的に測定し、我々の条件下での母仔隔離によるストレス度測定を試みた。しかしながら、コルチコステロンレベルに違いは見られなかった。生後9日目のため、下大静脈から採血したが、その際、麻酔下でも大きなストレスがかかったものと思われる。また、海馬CA1領域のGABAb受容体のmRNA発現レベルを測定したところ、無処置群と母仔隔離群の間で有意な差はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験環境の変化が行動試験の結果に大きく影響していると考えられる。ガラス玉覆い隠し行動試験がうまくいかない理由がまだ明確にできていない。ホールボード試験の結果も、本当に有意差なしと言えるか、実験環境を変えて確認する必要がある。しかしながら、飼育環境については、12か月間の継続飼育を行い、少なくとも見かけ上の大きな問題はないように思われるところまで確認できた。行動実験室の整備を継続して進めているが、前任校では行動実験を防音室の中で行っており、実験室内の他のラットが発する超音波発声や実験者の気配、さらには室内の匂いなどが結果に影響している可能性も考えられる。今後さらに実験環境や実験手順の工夫が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
行動実験に関しては、2.5畳程度で良いので防音室を設置できることが望ましい。しかしながら、200万円以上の予算を必要とし、現時点では難しい。また、動物実験施設外に行動実験室を移すことも感染症対策等の問題から不可能であり、現状での改善を重ねるしかない。幸い、行動実験室は狭いながらも独立しており、比較的静かな環境にある。隔離用の小型防音庫も行動実験室内にあり、匂い対策、照明と目隠しの設置方法・位置の調整、実験フィールドに面した壁への吸音板の設置等、経験豊富な行動実験研究者や業者等に意見を求めながら改善を重ねて行きたい。また、Wistarラットから、他系統のラットやマウスに変更も検討することも検討する必要があるかもしれない。 超音波発声の記録については、購入した装置と同じものを持ち良い結果を出している国内の施設がないか調べ、見学と技術指導を受けに行くことを計画したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初に計画がなかった初年次教育と入学前学習教材へのアクティブラーニングシステム導入が後学期に急きょ決まり、その担当者となったため、教育・運用方法の開発・設定とその実施など想定外の教育負担が急増した。このため、科学研究費補助金の採択課題に費やす時間的余裕が大きく失われた。また、当初購入予定であった超音波再生用スピーカーの利用には別途高額なアンプが必要であることがわかりその購入を取りやめた。以上の2点のため、科学研究費補助金の執行において約100,000円の残額が発生することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
超音波発声の記録に関して、運用実績のある国内施設への見学と技術指導に当てたい。また、不足する行動試験装置またはその材料や、研究活動を効率化するための人件費として使用したい。
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