研究実績の概要 |
結核菌はヒト線維芽細胞株,及びヒトマクロファージに対して生菌特異的に細胞傷害活性を持つことを明らかにした (Takii, et al., J Interferon Cytokine Res. 2001).感染した宿主細胞の培養上清を濾過滅菌した試料には細胞傷害活性が認められる.さらに,この培養上清は結核菌に対しても抗菌活性を示す.現在,培養上清に含まれる細胞傷害活性因子,及び,抗菌活性物質を同定するために感染後,培養上清を回収し,各種カラムにより分離精製を進めている. 近年,ワクチンアジュバントに用いられているアラムアジュバント(アルミニウム塩)の作用機序について宿主の好中球のDNAが網目状に組織に流失していること関与していることが報告された(Marichai, et al., Nat Med. 2011).このDNAはマクロファージなどの抗原提示細胞の表面上に発現している自然免疫受容体(toll like receptors; TLRs)のリガンドとして働いていることが示されている. この知見と結核菌生菌の宿主細胞傷害活性の獲得免疫に対する効果を考えると,宿主や菌由来のDNAが細胞外や菌体外に放出された結果,これらの核酸が免疫応答を活性化する可能性が想定される.本年度は細菌のDNAであるCpGオリゴで誘導されるサイトカインの産生誘導活性について検討したところ,マクロファージや線維芽細胞株には毒性は認められなかったことからCpGは結核菌生菌の直接的な宿主細胞傷害活性には関係していないことが示された.一方,サイトカイン誘導能は有していることから,宿主内で殺菌された菌から放出されたCpGが生菌特異的な細胞傷害活性をサイトカイン誘導を介して関節的に増強させている可能性が示唆された.
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