研究実績の概要 |
結核菌はヒト線維芽細胞株,及びヒトマクロファージに対して生菌特異的に細胞傷害活性を持つことを明らかにした (Takii, et al., J Interferon Cytokine Res. 2001).感染した宿主細胞の培養上清を濾過滅菌した試料には細胞傷害活性が認められる.さらに,この培養上清は結核菌に対しても抗菌活性を示す.現在,培養上清に含まれる細胞傷害活性因子,及び,抗菌活性物質を同定するために感染後,培養上清を回収し,各種カラムにより分離精製を進めている.本活性は,抗酸菌の毒力に比例していることを見出している.ウシ型結核菌の弱毒株であるBCGには複数の亜株が存在する(Behr, et al., Science, 1999).BCG亜株の間でも細胞生涯活性が異なる(Takii, et al., J Interferon Cytokine Res. 2001).BCG亜株間でのマクロファージからのインターロイキン(IL)-1, 10, IL-12,腫瘍壊死因子(TNF)-αの誘導の違いを検討した.その結果,宿主細胞内での菌の生存とIL-1,IL-12の産生誘導能に相関がある一方,IL-10の産生誘導能は逆相関していた(Taniguchi, et al., Microbiol Immunol., 2015).細胞傷害活性はIL-1やTNF-αで増強されることから(Takii, et al., J Interferon Cytokine Res. 2001),これらのサイトカインの誘導の強い株は毒力が強い可能性が示唆された.また,カタラーゼやスーパオキシドディスムターゼ等の抗酸化活性に働く酵素が菌の宿主内での生存能と関係しており(Takii, Kekkaku 2015),感染宿主細胞からのサイトカイン産生誘導能と相関している結果を得た.生菌特異的な宿主細胞傷害活性は感染細胞から産生されるIL-1やTNF-αなどのサイトカインがオートクラインやパラクラインに働き増強されることから,今後,抗酸化活性の強弱と宿主細胞傷害活性について調べていきたい.
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