ヒト唾液中にはジぺプチジルペプチダーゼ4(DPP IV)を豊富に含有する膜小胞(DPP IV-エキソソーム;DPP4exo)とDPP IV-非含有エキソソーム(dDPP4exo)が存在する。DPP4exoには唾液中LPSの約20%、dDPP4exoには約1.3 %が存在し、ポリミキシンレジンでの結合実験によりDPP4exoのLPSはエキソソーム表面に強く結合していることが推察された。DPP4exoのマウスマクロファージ(Mφ)に対するNO産生は同じ濃度のLPSより低下したが、インターフェロン-γ(IFN-γ)添加により、NO産生は顕著に増加した。一方、dDPP4exoはIFN-γ添加時もNO産生を引き起こさなかった。DPP4exoには口腔内でLPSを結合して、過剰な免疫反応を抑制する遊離のLPS受容体(TLR4)およびそのコレセプター(CD14、LBP、MD2)、LPS結合タンパク質(CAP-18、BPI)、さらにMφ活性化に関与するTLR4リガンドのS100A8が発現していた。これらの結果から、DPP4exoは平常時には口腔内の過剰な防御反応を抑制するが、細菌感染などの炎症時には、IFN-γとの協働作用によって殺菌作用を持つNO産生を引き起こすことが推測された。 薬物キャリアー等の臨床的応用の基盤とするためにエキソソームの安定性を検討した。胃内、腸内のようなプロテアーゼ存在下で3時間後には一部膜タンパク質が分解したが、エキソソームマーカータンパク質、粒子径、形態が維持されていたので、腸内に到達可能と考えられた。よって、唾液エキソソームによる機能性エキソソーム生産のための基礎データが得られたと考えられる。唾液エキソソームは豊富にIgAを含むことから、口腔内の異物抗原がエキソソームに結合して腸管に達し、腸管免疫を介して口腔内に抗原提示され免疫系を賦活する可能性が考えられた。
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