研究課題
基盤研究(C)
ピロリ菌の産生するCagA は宿主細胞内へ装填され、がん蛋白質として機能するが、宿主細胞内でオートファジーにより分解される。CagA分解性オートファジーは、ピロリ菌の分泌毒素VacAが宿主細胞表層のLRP1蛋白質に結合することで誘導される。そこで、LRP1依存的CagA分解性オートファジー発現機構の解析を行った。その結果、LRP1はオートファジー発現時に、細胞表層にてプロセシングを受け核内移行が亢進することが明らかとなった。さらに、核内移行したLRP1-ICDドメインは、lysosome表層蛋白質の転写因子として機能し、これにより発現が亢進したlysosome表層蛋白質は、CagA分解性オートファゴソーム及びオートリソソームの両者に局在することがautophagic flux assayより明らかとなった。つまり、核内移行が亢進するLRP1-ICDドメインはオートファゴソームとリソソームの融合起点において、リソソーム産生亢進を介した重要な役割を担っていることが示唆された。さらに、オートファジー発現時に、核内において、LRP1-ICDは、異なる蛋白質と結合することもnano LC-MS/MS解析で明らかとなり、核内移行したLRP1-ICDによる過剰なlysosome表層蛋白質の発現誘導が制御される事が明らかとなった。さらに、この蛋白質の過剰発現細胞では、オートファジー誘導が抑制されることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
CagA分解性オートファジーの発現誘導に関わるLRP1シグナルの解析を目的とした研究であるが、これまでに、オートファジー誘導に対するLRP1の関与が、核内移行後の転写因子としての機能、また、その制御システムの両者を明らかにすることができ、順調に計画が進行していると考えている。しかし、LRP1依存的な細胞内グルタチオン低下誘導機序については、GSH合成経路遺伝子の発現制御が核内移行したLRP1-ICD依存的ではなかったことから、現時点で明らかとなっていない。
LRP1依存的な細胞内グルタチオン低下誘導機序の解明を、網羅的代謝産物解析といった手法を導入することで実施する。さらに、核内移行したLRP1-ICD依存的に誘導されるオートファゴソームとリソソームの融合の分子メカニズムについて、細胞質内イベントに注目した解析を展開する。さらに、nano LC-MS/MS解析で明らかとした、核内でのLRP1-ICD制御蛋白質の発現制御機構とオートファジー制御機構との関係を明確にする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件)
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