核内受容体constitutive androstane receptor(CAR)やpregnane X receptor(PXR)は、様々な環境化学物質や医薬品などの生体外異物をリガンドとして、異物の代謝などで重要な役割を果たしている。多くの場合、CARとPXRはリガンドを共有している(デュアルリガンド)。これまでにCARとPXRによるエネルギー代謝調節作用及び異物・薬物代謝酵素発現誘導におけるクロストークについて、様々な検討が行われてきた。しかしながら、ほとんどが一部の典型的なリガンドに関するものであり、デュアルリガンドあるいは選択的CAR調節薬(selective CAR modulator; SCARM)の視点が欠けていた。我々はテトラサイクリン誘導性CARの安定導入ヒト肝がん細胞株(HepTR-CAR)及びPXRを安定的に過剰発現する細胞株(HepTR-CAR/PXR)を用いて、デュアルリガンド処置によるCAR及びPXRの標的遺伝子 CYP2B6、3A4、2C9、UGT1A1のmRNA発現を評価した。その結果、デュアルリガンドによるCARとPXRクロストークを介する遺伝子発現調節機構には遺伝子選択性、CAR/PXRの発現量が関与する可能性が示唆された。そこで、遺伝子発現選択性調節機構を明らかとするため、CYP2B6、3A4、2C9、UGT1A1遺伝子のエンハンサー領域を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを用いて評価した。その結果、SCARMによる転写誘導選択性はそれぞれの遺伝子の持つエンハンサー配列によって決まっていることが明らかとなった。以上の結果より、核内受容体(CAR、PXR)による遺伝子発現の多様性はシスエレメント(DR4モチーフ)と結合しているリガンド(様々なタイプのSCARM及びデュアルリガンド)の関係により決定されていることが明らかとなった。
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