平成27年度の成果: 1) マウス肺マクロファージJ774-1細胞に対する細胞毒性を検討したところ、Δ8-THCは、11-hydroxy-Δ8-THCおよび11-oxo-Δ8-THCより強い細胞毒性を示した(IC50= 5.38μM)。また、Δ8-THC-11-oic acid は20μMまでほとんど細胞毒性を示さなかった。(毒性の強さΔ8-THC>>11-hydroxy-Δ8-THC=11-oxo-Δ8-THC>>>Δ8-THC-11-oic acid) 2) 11-hydroxy-Δ8-THCおよび11-hydroxy-Δ9-THCは、リポキシゲナーゼ (LOX-12)を阻害し、IC50は15~40μM程度であった。また、Δ8-THC-11-oic acidおよびΔ9-THC-11-oic acid (2 ~ 5μM)はLOX-15を30~40%阻害した。 まとめ: 主要フィトカンナビノイド (THC、CBN、CBD) は、ヒト脳、肺および胎盤ミクロソームのCYPsにより主にアリル位の8位および11位(THCおよびCBN)、または6位および7位(CBD)で代謝を受けることが明らかとなった。また、胎盤ミクロソームによるカンナビノイドの代謝活性は、CYP19の阻害剤(アンドロステンジオンおよびアミノグルテチミド)によって強く阻害された。さらに、主要フィトカンナビノイドはCYP19により胎盤ミクロソームと同様に代謝をうけることが明らかとなった。この他、CYP19依存性の酵素活性に対して、いずれのカンナビノイドも阻害作用(IC50 = 10 ~ 50μM)を示すことも明らかとなった。脳および肺ミクロソーム中にもTHC代謝物のアルデヒド体をカルボン酸体へと酸化する Microsomal Aldehyde Oxygenase (MALDO)の存在が明らかとなった。主要カンナビノイドは程度の差こそあれ、脳ミクロソーム中の内因性カンナビノイド(アナンダミドおよび2-アラキドノイルグリセロール)の水解活性を阻害した。これらの結果は、主要フィトカンナビノイドのヒト脳、肺および胎盤における毒性発現を考える上での重要な基礎的知見となるものである。
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