研究課題
【研究目的】我々の遺伝子改変マウスで加齢性難聴を発症する事、その機能増強により加齢性難聴の予防に成功してきた。また、予備的解析より、標的分子機能亢進マウスと野生型マウスに騒音曝露を行い、聴性脳幹反応(ABR)測定を実施した所、環境(騒音)ストレスに対する耐性がある事が分かってきた。一方、騒音ストレスは難聴の主要な危険因子であるが、騒音性難聴と標的分子の関連は未だ不明な点が多い。そこで、本年度は標的分子機能亢進マウスの騒音曝露に対する感受性を更に検討し、標的分子の機能を亢進させる化合物を投与し、騒音性難聴の予防効果を検討した。【結果】本年度の結果より、標的分子の機能を亢進させる化合物は騒音性難聴に部分的ではあるが有意に耐性を示す事が示唆された。また、内耳の形態解析により、標的分子の賦活化も観察された。一方、過去の我々の研究成果により、無機元素のバリウムが聴覚障害を誘発する事が示唆されている(Neurotoxicology 2012)。ヒトを対象にした疫学研究により、飲料水や食物に含まれるバリウムが、耳毒性を誘発する新規の環境因子である事が明らかになった(J Expo Sci Experimental Epidemiol 2015)。【今後の検討課題】化合物投与によるレスキュー実験の例数をふやし予防効果を確定する。また、内耳の形態解析の例数もふやし、標的分子の賦活化効果の半定量的解析も実施する。
2: おおむね順調に進展している
標的分子のトランスジェニックマウスが騒音性難聴に耐性を示す分子メカニズムが明らかにされつつあり、おおむね計画通りに進行している。なお、本年度は、前年度に研究代表者が所属を変更した事に伴い、遺伝子改変マウスの移動に時間を費やした為、研究期間の延長を申請したが、研究の進捗については全く問題ない状況である。
今年度用いた化合物以外にも、内耳の聴神経系の維持に関わる分子群の発現・活性を制御出来る化合物の選定をいくつかの投与法で進め、騒音性難聴発症の予防薬の開発をマウスレベルで展開する。
研究期間中に研究代表者が所属を変更した事に伴い、遺伝子改変マウスの移動に時間を費やした為、研究が次年度にずれ込んだため。
今年度用いた化合物以外にも、内耳の聴神経系の維持に関わる分子群の発現・活性を制御出来る化合物の選定をいくつかの投与法で進め、騒音性難聴発症の予防薬の開発をマウスレベルで展開する為の試薬などの消耗品、成果発表の旅費などに使用予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 図書 (1件) 備考 (2件)
J Expo Sci Environ Epidemiol
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http://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical/2511/index.html
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/hygiene/