研究課題/領域番号 |
25460179
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
木村 朋紀 摂南大学, 薬学部, 准教授 (70340859)
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研究分担者 |
保坂 卓臣 摂南大学, 薬学部, 助教 (30611579) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 亜鉛 / エピジェネティクス / MTF-1 / p300 |
研究実績の概要 |
胎仔期に経験した亜鉛欠乏が成獣へと成長した後の遺伝子発現応答や免疫応答に影響を及ぼすことが報告されている。近年、Developmental Origins of Health and Diseases (DOHaD: 成長過程における栄養障害や環境因子の作用に起因する疾患の発生)という概念が提唱されているが、胎仔期の亜鉛欠乏もまた、DOHaDの一要因となると考えられる。栄養障害などがエピジェネティックな記憶として細胞に残ることがDOHaDの1つの機構として予想されるためである。本研究では、低亜鉛がもたらすエピジェネティックな変化とその機序を明らかにすることでDOHaD機構を理解する上で必要不可欠な知見を得ることを目的としている。前年度に引き続き、培養細胞を用いて低亜鉛培養によるエピジェネティックな変化を見いだすため、バイサルファイト法によるDNAメチル化程度の変化の観察を行った。本年度は、低亜鉛での培養期間を1週間から1か月に延長したが、それでもなお、低亜鉛培養による変化は観察されず、新たな知見を得ることは出来なかった。なお、低濃度カドミウムでの1週間の培養によって、その後のカドミウムによるメタロチオネイン誘導が亢進するという現象を見出している。一方、ゲルシフトアッセイ系において、転写共役因子p300が重金属応答性転写因子MTF-1のDNA結合量を増加することを明らかにしており、今年度は、このDNA結合量増加作用にはp300のヒストンアセチル化ドメイン(HATドメイン)がかかわっていることを明らかすることが出来た。p300はMTF-1による転写活性化に必須の因子であるが、転写活性化にどのようにかかわっているのかは不明であった。p300のHATドメインがDNA結合量を増加するという知見は、この転写活性化機構を知る上で有用な情報であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画段階では、培養細胞を用いて低亜鉛培養によるエピジェネティックな変化を見いだし、類似の条件を動物個体レベルに拡大する予定であった。しかしながら、未だに低亜鉛培養によるエピジェネティックな変化の同定に至っていないため、達成度はやや遅れている。ただし、MTF-1による亜鉛依存的転写活性化メカニズムの解明において研究成果を得ることが出来ている。この研究は、エピジェネティック制御の分子メカニズムを理解する上で重要であり、こちらの研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いて低亜鉛培養によるエピジェネティックな変化を見いだし、類似の条件を動物個体レベルに拡大する予定であったが、いまだ低亜鉛培養によるエピジェネティックな変化の発見に至っていない。そのため今後は、同様の条件検討を継続しつつ、動物個体レベルでエピジェネティックな変化を引き起こすという報告(J Nutr Biochem, 2013, 24, 256-66:胎仔期の低亜鉛環境が成獣となってからカドミウムに対するMT誘導能に影響するという報告)の条件を用い、その分子機構解明のために種々遺伝子プロモーター領域のメチル化状態を調べるとともにここにリクルートされている転写因子やリモデリングファクターなどの同定を行う。p300の関与についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が予定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に充てる。
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