研究課題
基盤研究(C)
近年,医薬品分野において薬物動態の改善を目的としたナノ化製剤が注目を集めているが、製剤をナノ化することによる生体への影響は未だ知見が乏しい。そこでナノマテリアルの中で最も汎用されているものの一つである非晶質ナノシリカ (nSP) を用いて免疫系に及ぼす影響を検討した。方法として、マウスへの卵白アルブミン (OVA) 免疫時にnSP (粒子径:30 nm) を併用投与 (3,30,300 ug/マウス) し、投与21日後の血清中抗原特異的抗体量 (IgG, IgG1, IgG2a, IgE)、採取脾臓細胞の培養上清中のサイトカイン量 (IFN-gamma,IL-4,IL-5,IL-10,IL-17)、脾臓細胞増殖反応を評価した。その結果、nSPは用量依存的に抗OVA IgG抗体産生を促進することを見出した。またnSPによって抗原特異的脾臓細胞増殖反応も用量依存的に増強された。このことからnSPはアジュバント効果を有することが示唆された。また液性免疫の指標であるTh2型抗OVA IgG1及びIgE抗体、細胞性免疫の指標であるTh1型抗OVA IgG2a抗体を測定した結果、両者においてnSPによる用量依存的な抗体産生増強が認められた。更に培養脾臓細胞によるサイトカインに関しても、今回測定した全てのサブタイプのTh細胞 (Th1,Th2及びTh17) 由来のサイトカイン産生が促進されていた。このことから、nSPはTh2型を選択的に誘導する一般的な粒子アジュバントとは異なり、免疫応答全般を促進することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ナノ粒子は、そのサイズが非常に小さいことから、これまで汎用されたより大きな粒子と比較し、細胞毒性を有していることが示唆されていることから、免疫系およびアレルギーや自己免疫疾患に影響を与える可能性があるが、本研究によってナノ粒子の代表である非晶質ナノシリカは免疫反応に対し促進的に作用(アジュバント作用)するすことが明らかとなった。このような非晶質ナノシリカのアジュバント作用は、本ナノ粒子がアレルギーや自己免疫疾患に対して影響を与えうる可能性を示唆しており、本研究によって新規の重要な知見が得られたと考える。
今回の研究においては、粒子径が30 nmの非晶質ナノシリカを用いたが、本粒子径よりも小さい(3 nm)あるいは大きなサイズ(300 nm)のものを用いて、粒子径の差異によってアジュバント作用あるいはTh1、Th2、Th17サイトカイン産生もまた異なるのかについて検討したい。また、アレルギー疾患あるいは自己免疫疾患の発症において、免疫寛容の破綻が示唆されていることから、本ナノ粒子の経口免疫寛容に与える影響についても検討する必要がある。
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