研究課題
昨今、大麻は薬物乱用の観点から注目されているが、欧米諸国では、大麻主成分のテトラヒドロカンナビノール(THC) (マリノール; 合成THC)が医療用大麻として臨床使用されている。THCは、がん患者の悪心や嘔吐の抑制を目的として使用されている。しかし、同時に古くからTHCが内分泌かく乱作用を示すことが指摘さていたが、そのメカニズムは不明のままである。したがって、THCの臨床適正使用には課題が残る。本研究は、このTHCによる内分泌かく乱作用について調査することを目指した。THCはがん患者に適用されることから、本研究では、まずTHCがヒト乳がん細胞増殖に与える影響を解析した。THCは乳がん細胞の増殖を抑制し、この抑制作用は生理的濃度の女性ホルモン存在下で顕著であった。このメカニズムとして細胞内のエストロゲン受容体α(ERα)とERβの発現バランスの破綻が示唆された。したがって、THCは、抗がん(乳がん)の観点からは有用と考えられるが、同時に正常細胞におけるERαとERβの発現バランスを乱すことで、女性ホルモン作用のかく乱「異常」を来すことが考えられた。本年度の研究では、THCの生体影響、特に子宮や卵巣への影響を解析することに注力した。雌マウスを用いた検討で、THCの投与により水分の貯留を伴う子宮肥大が確認され、生体への負の影響「異常」が示唆された。しかし、この異常と内分泌かく乱(=ERαとERβの発現バランスの破綻)との関連性については不明である。次年度以降は、この未決課題の解明に着手する予定である。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書(実験計画)に記載したとおり、H26年度の研究は怠りなくほぼ順調に進んでいる(研究実績の概要参照)。
最終年度のH27年度研究では、テトラヒドロカンナビノールによるERα/ERβの発現バランスの撹乱メカニズムを分子レベルで解明することを目指す。特に、ERβの発現誘導メカニズムについては不明な点が多いことから、本研究ではTHCによるERβの誘導メカニズムを明らかにすべく研究を展開する。
当初の概算計画よりも効率的に消耗品などを購入・使用することができたため。
効率的に予算を使用することを心掛けるが、最終年度の研究をするに際して、繰り越し予算は予備的検討を含めた十分な実験を実施するために使用する計画である。
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