研究課題
欧米諸国では、テトラヒドロカンナビノール(THC)は医療用大麻として、がん患者の悪心や嘔吐などの予防を目的として臨床使用されている。しかし、同時にTHCは乱用目的で使用される薬物型大麻草の主成分でもある。大麻(マリファナ)の使用はヘロインやコカイン(ハードドラッグ)などの使用に繋がる可能性が指摘されており、ゲートウェイドラッグと考えられている。このようにTHCは巷に溢れており「身近」な存在となっている現状がある。THCには以前から内分泌かく乱作用があることが示唆されており、臨床使用、さらには乱用によって引き起こされうる内分泌かく乱作用の問題は看過できるものではない。本研究では、これまで謎であったTHCによる内分泌かく乱の分子メカニズムを解明し、乱用防止はもちろんのこと、THCの臨床適正使用に向けた予防薬学的基礎研究を実施することを目標とした。通常、女性ホルモンはエストロゲン受容体アルファに作用してその生理作用を示すが、第2のエストロゲン受容体であるエストロゲン受容体ベータはアルファに対して抑制的に作用する働きがある。本研究で、種々の生化学的あるいは分子生物学的解析を行った結果、THCが「エストロゲン受容体ベータ」の発現増加およびその活性化を引き起こすことで女性ホルモンによるエストロゲン受容体アルファの作用を抑制(=かく乱)することが明らかになった。本研究で、これまで不明であったTHCによる内分泌かく乱作用の一端がin vitro(試験管)レベルで解明されたことになる。しかし、THCによるかく乱作用の全貌を解明するためには、本研究成果も踏まえて、今後さらなる研究を推進する必要がある。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Fundam. Toxicol. Sci.
巻: 3 ページ: 33-37
http://doi.org/10.2131/fts.3.33
巻: 3 ページ: 55-61
http://doi.org/10.2131/fts.3.55