エイコサノイドをはじめとする脂質メディエーターは、ホメオスタシスの維持や炎症をはじめとする様々な病態形成に関与している。脂質メディエーターの薬理学的な解析が進む一方で、機能発揮に必須の過程であると考えられる膜透過機構に関する情報は乏しい。本研究では、脂質メディエーター、特にω-3系およびω-6系多価不飽和脂肪酸の細胞外放出機構に関する検討を行った。 これまでに、エイコサノイド産生細胞として汎用されているA549細胞を用いた検討でプロスタグランジンE2およびE3、プロスタグランジンF2alphaおよびF3alphaの細胞外放出におけるABCC4の寄与について評価し、その寄与率が30~50%であることを示した。また、トロンボキサンB2およびB3の細胞外放出にABCC4は寄与しないことが示された。そこで、その他のエイコサノイド細胞外放出を担うトランスポーターの特性を評価するため、A549細胞より調製した細胞膜小胞を用い、ATP非存在下におけるプロスタグランジンE2の輸送を検討した。その結果、プロスタグランジンE2の輸送はプロトン勾配を駆動力とすることが明らかとなった。ナトリウムイオンやクロライドイオン、あるいは膜電位に関しては、プロスタグランジンE2輸送の駆動力とはならなかった。また、阻害剤に関する検討を行ったところ、既知のプロスタグランジンを輸送するトランスポーター(プロスタグランジントランスポーター、有機アニオントランスポーター)とは阻害感受性が異なる結果となった。すなわち、新規のプロスタグランジン輸送体の存在が示唆された。
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