研究課題
本研究では、アルブミン結合型内因性リガンドである尿毒症物質及び脂肪酸による腎障害進展機序の解明を目的とした。究極の目的は本障害進展機序に基づいた治療戦略の開発である。H26年度は尿毒症物資p-cresyl sulfate (PCS)による血管障害の分子機序に加え、脂肪酸による炎症を介した腎障害発症の可能性について以下の知見を得た。1. ヒト血管内皮細胞及び平滑筋細胞を用いたin vitroの検討から、PCSは細胞内のNADPH oxidaseの活性化を介して 活性酸素種(ROS)産生を亢進することを確認した。過剰産生したROSは、MCP-1誘導を介して炎症を惹起するとともに、アルカリフォスファターゼ、オステオポンチン、コアバインディングファクター1の誘導により血管障害を惹起した。本結果はPCS負荷CKDラットの弓状動脈においても同様に確認され、PCSによる血管障害作用がin vivoにおいても再現できた。2. ヒト尿細管細胞を用いた検討から、アルブミン尿に含まれるアルブミン結合型脂肪酸の一つであるパルミチン酸が自然炎症関わることを見出した。加えて、過酸化水素誘発の酸化ストレス下においては、パルミチン酸からオレイン酸への代謝を担うElovl6の発現が低下することを見出した。以上のように、アルブミン結合型内因性リガンドである尿毒症物質及び脂肪酸による細胞障害の分子機序についての一端を明らかにしてきた。
2: おおむね順調に進展している
概ね当初の予定通りに進んでいる。特に、脂肪酸による炎症を介した尿細管障害作用が、尿細管細胞外からのみならず細胞内からも惹起されるという知見を見出すことに成功し、次年度への検討課題に順調に取り組めることを確認した。
前年度の成果に基づき、特にアルブミン尿に含まれる長鎖脂肪酸により誘発される炎症の機序を解明するとともに、腎組織の酸化ストレスに伴う組織内脂肪酸組成変動の解析と変動要因について検討する。また、脂肪酸組成が腎組織に及ぼす影響について検討を加える。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Pharmacol Res Perspect
巻: 3 ページ: e00092
10.1002/prp2.92
J Pharmacol Exp Ther
巻: 352 ページ: 244-257
10.1124/jpet.114.219493
PLoS One
巻: 9 ページ: e85216
10.1371/journal.pone.0085216
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/Yakuzai/