研究課題/領域番号 |
25460194
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
湯浅 博昭 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20191471)
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研究分担者 |
太田 欣哉 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90448704)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アクアポリン10 / チャネル / トランスポーター / 核酸塩基 / 小腸 / 吸収 |
研究実績の概要 |
本研究は,アクアポリン10(AQP10)の小腸特異的な発現及び新たに見い出された核酸塩基輸送活性に着目し,未解明な部分の多い核酸塩基及び関連薬物の小腸吸収における役割を探るものである.前年度に引き続き,クローン化AQP10を導入した哺乳類細胞発現系(MDCKII細胞)での検討を進めた結果,新たに6-mercaptopurineに対する輸送活性を見い出すことができた.その輸送は,Na+非要求性及びpH感受性(酸性pHでの輸送活性上昇傾向)を示し,また核酸塩基類等の類縁物質による阻害を受けないという点で,先に検討した5-fluorouracilの輸送特性と同様であり,チャネル型の輸送機構の関与が示唆された.一方,Caco-2細胞(小腸上皮細胞モデル)での6-mercaptopurine輸送については,ヌクレオシド類による阻害等の特徴から,ENT(ヌクレオシドトランスポーター)様トランスポーターの関与の可能性が示唆されたが,AQP10関与による輸送の特徴を確認するには至らなかった.このモデル細胞系でのAQP10機能に関しては,引き続き検討を行っているところである.以上のAQP10に関する検討とは別に,AQP10と同じくアクアグリセロポリン類に属するAQP7の輸送機能について比較検討を試みた.AQP7はAQP10と同様に促進拡散型の高いグリセロール輸送活性を示し,アクアグリセロポリンとしての基本特性が確認された.しかし,6-mercaptopurine及び5-fluorouracilに対する輸送活性はみられず,また他の核酸塩基類に対する輸送活性もほとんどみられなかった.したがって,核酸塩基輸送機能は,アクアグリセロポリン類のなかでもAQP10に特徴的な機能である可能性が考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クローン化AQP10の6-mercaptopurine輸送活性を見い出し,その輸送特性の把握等の成果を得,AQP10の核酸塩基輸送機能解析を進展させることできた.また,AQP7の機能との比較から,核酸塩基輸送機能がAQP10に特徴的なものである可能性が示唆された.一方で,Caco-2細胞(小腸上皮細胞モデル)においては,6-mercaptopurine輸送活性を見い出すことはできたが,AQP10関与の特徴を見い出すことができず,検討課題として浮かび上がってきた.新たな課題が浮上したが,全体としては,AQP10の核酸塩基輸送機能及び小腸上皮細胞モデルでの核酸塩基輸送に関する情報の集積を進展させることができた.
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今後の研究の推進方策 |
クローン化AQP10の哺乳類細胞発現系において,各種核酸塩基類の輸送解析を継続し,基質認識特性の把握,特異的阻害剤の検索を試みる.また,その他の輸送調節因子の検索を試みる.Caco-2細胞(小腸上皮細胞モデル)においては,新たに見い出されたENT様トランスポーターの機能特性を把握したうえで,AQP10の関与の検証を試みる.すなわち,AQP10とENT様トランスポーターの両者が役割分担しながら核酸塩基類の輸送に関わっている可能性等も考慮しながら検討を行い,核酸塩基類の輸送の実態の把握を目指す.これらにより,AQP10の核酸塩基輸送機能の把握,核酸塩基類の小腸吸収における役割の解明を進め,核酸塩基関連の経口薬の使用法の最適化及び開発に役立つ基礎情報の獲得を目指す.
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