研究課題
基盤研究(C)
本年度は、分泌型レポーター遺伝子安定発現iPS細胞(stable iPS細胞)の樹立を目指した検討を行った。また、既に確立している肝分化誘導法の更なる改良も行った。iPS細胞は、ヒト新生児皮膚繊維芽細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、Glis1及びNanogをレトロウイルスを用いて導入(スピンフェクション法)することで作製した。また、CYP3A4遺伝子の上流領域をGaussia及びCypridinaルシフェラーゼ遺伝子とそれぞれに連結し、分泌型レポーター遺伝子安定発現用プラスミドベクター及びレンチウイルスの作製を行った。これらのベクターをHepG2細胞に導入後、薬物処理を行ったところ、十分なレポーター活性の上昇が認められた。しかしながら、高いバックグラウンドが認められたことから、現在使用しているベクター以外のベクターについても今後同様の検討を行うこととした。Stable化については、ヒト新生児皮膚繊維芽細胞及びHepG2細胞を用いて進行中である。近年、我々は、CYP2D6やCYP3A4が細胞周期に依存して発現量が変化することを見出した。そこで、iPS細胞の肝分化誘導過程中に細胞周期に影響を及ぼす種々の化合物を処置し、最終的に得られる肝分化誘導細胞の成熟性が向上するか検討を行った。Indirubin-3’-oxime、RO-3306、Nocodazole、Thymidine等を使用した結果、一部の化合物において、未処置の肝分化iPS細胞と比較してアルブミンやCYP2D6及びCYP3A4の発現量が上昇することを明らかとした。しかしながら、未だ肝細胞としての成熟性が十分ではないことから、次年度以降においても引き続き検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、分泌型レポーター遺伝子安定発現iPS細胞(stable iPS細胞)の樹立を目指した検討を行った。iPS細胞の樹立、CYP3A4の上流領域と連結した2種類の分泌型レポーター遺伝子安定発現用レンチウイルスの作製及びその評価を申請計画通りに遂行した。本評価系の改良すべき点を明らかにし、stable iPS細胞の樹立に向けた検討も現在進行中である。また、細胞周期に着目した新たな観点からの分化誘導法の改良は、次年度以降のよりヒト肝細胞に類似した肝分化iPS細胞の作製に繋がることが期待できる。従って、本年度は、概ね申請通りに研究が進行しているうえ、新たな検討も行うことが出来たことから、順調に進行していると考える。
今後は、stable iPS細胞の樹立を継続するとともに肝分化誘導過程中のCYP3A4/CYP3A7発現パターンの再現を行う。RARRES2、SREBF1あるいはTHRSP発現アデノウイルス等を用いて、分化誘導過程中の導入時期や導入量等の検討に加え、細胞周期に着目した種々の化合物等も使用して、より正確に生体におけるCYP3A4/CYP3A7発現パターンを再現する。次に、CYP3A4/CYP3A7の上流領域に結合する転写因子及びその複合体の解析を行う。この結果あるいはその他の実験により得られた情報に基づき、生体におけるCYP3A4/CYP3A7発現パターンの再現性及び肝分化iPS細胞の薬物代謝活性等の機能性の向上が期待できる因子を同定し、iPS細胞の肝分化誘導過程中に導入し、その効果を検証する。
本年度は、予算請求額をほぼ計画通りに使用することができた。しかしながら、年度当初の研究計画において使用を予定していた学会等への出張旅費が節約できたため、次年度使用額が生じた。平成26年度は、NIH/NCIのLaboratory of Human Carcinogenesisに海外研修が決定しているため、本研究費を使用せず、海外研修終了後にiPS細胞培養関連の試薬及び消耗品購入に当てることとする。また、最終年度に補助事業期間延長承認申請を行う予定である。
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