研究課題/領域番号 |
25460195
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
佐々木 崇光 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (20382674)
|
研究分担者 |
永田 清 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (80189133)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / CYP3A / レポーター遺伝子 / 薬物代謝学 |
研究実績の概要 |
本年度は、AFPの発現調節機構に着目した肝分化誘導法への応用及び肝分化誘導法の改良、そして分泌型レポーター遺伝子安定発現iPS細胞(stable iPS細胞)の樹立に関する検討を行った。 昨年度に同定したAFPの発現調節機構に関与する遺伝子Xの発現について、ヒト肝がん患者サンプルのアレイ解析を行ったところ、stem細胞様の性質を有する悪性度の高い肝がん細胞(AFPが高発現)において、高発現していることを明らかにした。また、AFP高発現ヒト肝がん由来細胞株(HepG2細胞、HuH7細胞、Hep3B細胞等)においても遺伝子Xの発現が高いことを確認した。そこで、遺伝子Xのstable knockdownを行った結果、AFP発現量が低下することを見出した。現在樹立した肝分化iPS細胞はAFPが高発現していることから、得られた結果は肝分化iPS細胞の成熟性向上を目指した分化誘導法に応用できることが期待された。 既に同定している肝分化iPS細胞の成熟性を改善する可能性がある遺伝子3つのうちRARRES2について検討を行った。RARRES2発現アデノウイルスをHepG2細胞に感染させた結果、低感染時にCYP1A2やCYP3A4の発現が上昇する傾向が認められたが、感染量依存的な上昇は認められず、発現を抑制する傾向が確認された。他の因子(SREBF1あるいはTHRSP)についても同様の検討を行い、HepG2細胞においてCYP等の発現上昇が認められた場合、肝分化iPS細胞に感染させる予定である。stable iPS細胞の樹立に関しては、Gaussia及びCypridinaルシフェラーゼ遺伝子の導入方法の検討を行ったが、レポーター活性のバックグラウンドが高く更なる検討が必要であった。なお、昨年度までに樹立したiPS細胞は、30継代まで維持培養が可能であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年8月に、本研究計画の立案時に所属していた東北薬科大学から静岡県立大学薬学部に異動した。そのため、本研究を遂行するために必要な実験機器や試薬等の準備に時間を要し、研究計画通り進めることができなかった。平成26年度の海外研修及び本年度の異動と十分な研究成果を得るための時間の確保が困難な状況にあったため、補助事業期間延長承認申請を行った。一方で、肝分化iPS細胞の成熟性向上に寄与する可能性がある遺伝子Xを新たに同定し、その機能的影響についても検討を行っていることから、今後、十分な成果を得ることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、遺伝子XのノックダウンやSREBF1あるいはTHRSPの導入により、肝分化iPS細胞の成熟性向上や生体におけるCYP3A4/CYP3A7発現パターンの再現が可能であるか検討を行う。また、CYP3A4/CYP3A7の上流領域に結合する転写因子及びその複合体の解析を行うとともに、平成27年度に作製したCYP3A4遺伝子上流約12 kを含むレポータープラスミドを用いて、メカニズムベースで転写調節機構を明らかにする。さらに、既に本研究において明らかにしたCYP発現に影響を及ぼす細胞周期調節因子阻害剤等による肝分化iPS細胞の成熟性向上への寄与も検討を行う。これらの検討によって得られた情報を統合し、肝分化iPS細胞の薬物代謝活性等の機能性の向上を確認する。また、stable iPS細胞の樹立に関しては継続し、レポーターアッセイベースで肝分化誘導過程中のCYP3A4/CYP3A7発現パターンの再現を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、申請者の所属機関の異動が生じたため、本研究の一部を実施することができなかった。そのため、予算の一部を使用しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、平成26年度及び平成27年度に計画していた研究の一部を実施するため、本研究計画通りiPS細胞培養関連の試薬及びその他消耗品購入に当てることとする。
|