研究課題/領域番号 |
25460199
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
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研究分担者 |
樋口 慧 帝京大学, 薬学部, 助教 (10625304)
黄倉 崇 帝京大学, 薬学部, 准教授 (80326123)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / ヒト脳移行性 / トランスポーター / 有機カチオン性薬物 / ヒト血液脳関門モデル細胞 / フロー培養システム |
研究実績の概要 |
ヒトにおける薬物の脳移行性を予測するため、血液脳関門(BBB)の薬物の輸送機能(速度と機構)を信頼性の高いin vitro実験法で評価し、その結果をヒト個体にスケールアップする方法論の確立が望まれている。本研究では、ヒトBBBのモデル細胞である不死化細胞株hCMEC/D3細胞を用い、上述の方法論の開発を目指した。 昨年度はディッシュ型培養法を用い、複数の薬物のBBB輸送機能を同時に評価するin vitroカクテルドーシング法を考案した。本年度は本法の有用性をさらに掘り下げるとともに、新たに培養法について検討した結果、以下の成果を得ることができた。 1)In vitroカクテルドーシング法を用いて、阻害および駆動力の実験が可能かについて検討した。基質薬物としてプロトン/カチオン輸送系の基質である5種類のカチオン性薬物(oxycodone, tramadol, memantine, clonidine, naltrexone)を用いた。種々の阻害剤を共存させた阻害実験、並びにプロトン交換輸送機構について検討した結果、本法は、複数の薬物のBBB輸送機構(阻害効果および駆動力)を同時に検出できる方法であることが実証された。 2)本研究課題の目的の1つに、hCMEC/D3細胞を用いた新規フロー培養システムの構築がある。その一環として今年度はトランスウェル型培養法の最適化を試みた。D3細胞の単独培養、ヒトアストロサイトとの共培養、Wntシグナル経路賦活剤(リチウム)添加による影響、および循環培養器を用いたshare stressの電気抵抗値に対する影響をを比較した。結果、単独培養に比べ、共培養、リチウム添加、share stress負荷により、電気抵抗値は上昇する傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの研究課題は、1)薬物のBBB輸送機能を網羅的に評価するカクテルドーシング法の確立、および2)hCMEC/D3細胞を用いた新規フロー培養システムの構築であった。研究実績の概要の項で記述したように、当初の目的は予定通り進展しているものの、フロー培養システムの詳細な検討が課題として残されている。その理由は、フロー培養デバイス構築に必要な部品を取り扱う販売業者からの供給が遅延したため、十分な検討が行えなかったためである。以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)hCMEC/D3細胞を用いた新規フロー培養システムの構築について: フロー培養システムの構築は、本年度の研究で予備検討を行ったものの不十分である。この課題は研究協力者であるフランス、コシャン研究所のPierre-Olivier Couraud博士との共同で進める予定である。本年度、Couraud博士が来日した際に、本件を確約した。今年度の繰り越しおよび来年度の研究費によりフロー培養システムの検討を本格化する。 2)In vitroカクテルドーシング法およびフローデバイスを実験法の応用として、分子実体既知輸送体および分子実体未知の輸送体の両者を標的として基質探索を行う。前者の分子実体既知輸送体については、MDR1, BCRP,OCTN2を選択する予定である。後者については、申請者がこれまでに明らかにしてきたプロトン/カチオン交換輸送系を標的とし、既知基質薬物を含む数種類のカチオン性薬物を選択し、本BBB輸送機能評価法の有用性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的の1つに、hCMEC/D3細胞を用いた新規フローシステムの構築がある。この検討において透析ファイバー型フローシステムと新規トランスウェル型フロー培養システムを使用する予定であった。海外研究協力者であるPierre-Olivier Couraud博士との具体的打合せは、本年度完了したものの、実施は来年度行う予定である。そのため、培養デバイスの購入費、培養試薬、実験試薬等の購入費として、約505,990円の未使用差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記未使用差額は、培養デバイスの購入費および培養用試薬の購入費の一部として27年度に使用する。
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