研究課題/領域番号 |
25460201
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
古林 呂之 就実大学, 薬学部, 講師 (00399156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経鼻吸収 / 頸部リンパ節 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、昨年度から引き続き、薬物の物理化学的性質と頸部リンパ節移行性の関係を明らかにするために、抗菌薬のazithromycin及び抗がん剤のirinotecanのマウス鼻腔内投与後の経時的な頸部リンパ節移行性を評価した。両薬物を溶液としてマウス鼻腔内及び対照実験としてマウス静脈無いに投与し、一定時間経過後に頸部リンパ節及び血液を採取した。頸部リンパ節中の薬物濃度からそれぞれのAUCを算出し、静脈内投与後のAUCに対する鼻腔内投与後のAUCの比を計算した結果、azithromycinでは約1.7倍、irinotecanでは約1.2倍となり、両薬物ともに頸部リンパ節送達における経鼻ルートの優位性が示唆された。昨年度に実施したsaquinavir及びetoposideの結果と合わせて、各薬物の分子量、脂溶性、溶解度、培養細胞層透過性との関係性を解析した結果、培養細胞層透過性とAUC比の間に相関性が示された。組織内におけるリンパ移行には分子量が影響することが一般的であるが、今回用いた薬物の分子量は、最も大きいazithromycinでも750程度であり、経鼻吸収ルートにおいても分子量1000以下では振り分けにほとんど影響がないことが明らかとなった。引き続き、異なる物性の薬物について、また、投与剤形を粉末製剤として同様の実験を予定している。 本年度はさらに、頸部リンパ節転移の抑制効果に関する病理評価の方法に関する検討を行った。病理評価の精度を高めるためには、試料として採取した個々のリンパ節の全体に転移しているがん細胞を検出する必要があり、簡便に検出できる可能性のあるラマン分光法を利用した条件設定を行った。これにより来年度に予定している転移抑制効果の評価を迅速に進めることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル薬物の物理化学的性質に合わせた各種製剤の効果に関する実験に遅れを生じている。モデル薬物の物理化学的性質と頸部リンパ節移行性に関する実験において予想と大きく異なる結果が出たこともあり、再実験や解析に時間を費やしたためである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、各種製剤化の効果に関する実験を優先し、がん転移抑制に効果的な薬物と製剤の組み合わせについての結果を得たいと考えている。実験の分担による効率化を図り、実験数を増やすことで遅れを取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入時に発生する1円及び10円単位の端数の積算額である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品購入に充てる。
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