研究課題/領域番号 |
25460203
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菅原 満 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60332467)
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研究分担者 |
武隈 洋 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (00396293)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 造血幹細胞移植 / エトポシド / シクロホスファミド / 細胞周期 / 白血病 |
研究実績の概要 |
昨年度の検討において、シクロホスファミドの活性体(4-HPC)を事前に曝露した後にエトポシド(VP-16)を曝露すると殺細胞効果が上昇する現象を見出した。また、その原因が4-HPCがVP-16への感受性の高いS期の細胞を増加させ感受性の低いG0/G1期の細胞を減少させたためであることを明らかにした。そこで今年度は、抗癌剤耐性の大きな要因となる薬物排出タンパク質であるp-gp発現が、この殺細胞効果に与える影響を検討した。また、副作用発現も考慮し、正常血管内皮細胞に与える影響も併せて検討した。 その結果、P-gpを安定に発現する細胞においては、VP-16の取り込み量の減少に伴いVP-16による殺細胞効果に対する感受性は低下していたものの、P-gpを発現していない細胞と同様、4-HPC前処理はVP-16の殺細胞効果を増強させることが明らかとなった。また、4-HPCを24 時間曝露した後ではS期の細胞が増加したことから、4-HPC前処理によるVP-16の殺細胞効果の増強は、4-HPC前処理によって細胞周期がS期に停止し、VP-16に対する感受性が上昇することが要因であることが示された。 続いて、安全性も考慮した薬物使用の最適化を目的として、ヒト血管内皮細胞由来の細胞を用いて前述と同じ方法でVP-16と4-HPCの曝露順序が殺細胞効果に与える影響を検討した。その結果、先に低濃度の4-HPCに曝露させてもVP-16の殺細胞効果の増強は認められず、細胞周期の変化もほとんど認められなかった。 これらの結果より、VP-16の殺細胞効果の増強には薬物曝露による細胞周期のS期への同調が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実施計画では、以下の点を明らかにすることを主目的とした。 1.薬物の取り込み量および殺細胞作用に及ぼす薬物排出タンパク質の影響 2.薬物暴露が血管内皮細胞に与える影響 「研究実績の概要」に記載したとおり、両項目について計画を変更することなく実施し、成果を得た。その成果の一部を学術誌に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、以下の点を検討する。 1.他の抗がん薬併用レジメンとの比較(特に細胞膜輸送活性に着目) 2.薬物濃度の経時的変動と殺細胞作用との関係(PK/PD)解析
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末近くに発生した旅費等の精算が終了していないため.
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次年度使用額の使用計画 |
実質的には年度内に終了しているものであり,次年度の当初に残っているものではない.
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