研究課題/領域番号 |
25460209
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角山 香織 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10571391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有害事象 / FAERS / シグナル検出 / EBGM / ROR / 性別 / 年齢 |
研究概要 |
米国食品医薬品局が運営する有害事象自発報告システム(FAERS)は、膨大なデータを保有する有用なデータベースである。しかしながら、有害事象自発報告システムには元来いくつかの弱点があることが指摘されている。一方、近年、このような膨大なデータに統計学的手法を適用し、医薬品との関連性が疑われる有害事象をシグナルとして検出できるようになったが、各種統計学的手法から得られる解析結果の特徴については、現在も議論が続いている。本研究では、①各種統計学的手法の解析結果の特徴、②患者背景や医薬品の販売経過年数、製薬企業等からの安全性情報発出が解析結果に与える影響、を明らかにし、有害事象自発報告データの弱点を理解し、その対応策を確立することを目指している。 ①に関して、平成25年度は、これまでに研究代表者らが解析を実施してきた16医薬品について、4種の統計学的手法によりシグナルとして検出された有害事象の数や種類を比較したところ、シグナルとして検出される有害事象の数はROR(reporting odds ratio)が最も多く、EBGM(empirical Bayes geometric mean)が最も少ない、また、EBGMでシグナルとして検出された有害事象は全てRORでシグナルとして検出された有害事象に包含される等の特徴を明らかにした。 また、②に関して、患者背景のうち性別と年齢の影響について検討を開始した。性別の影響はスタチンと抗精神病薬に関して、年齢の影響は抗精神病薬に関して解析を実施した。その結果、有害事象によっては層別解析の有無によりシグナル検出の結果が変動することが明らかとなった。 今後、データベースの解析対象期間を最新のものに更新し医薬品数を増やして解析を継続することで、有害事象自発報告データの弱点を理解し、その対応策を確立することにつながるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、FAERSデータベースを利用し4種の統計学的手法を用いて医薬品の有害事象を解析している。患者背景や医薬品の販売経過年数、製薬企業等からの安全性情報発出が解析結果に与える影響に関して解析を実施する医薬品は、研究代表者が医療現場の最近のトピックス、緊急安全性情報(イエローレター)や安全性速報(ブルーレター)などを参考に選出している。 しかしながら、これらの作業は、広範な論文検索、医師・薬剤師との意見交換等の活動が必要であり、例えば平成25年度に解析を実施した抗精神病薬のように、同効薬が多い薬効の医薬品を選出する場合は、予想以上に選出作業に時間がかかることが明らかとなった。 加えて、4種の統計学的手法によるデータの計算は、その分野に詳しい他研究室に依頼しているが、患者背景等の影響を検討するために、複雑な解析条件を設定すると条件によってはデータの計算に予想以上に時間がかかることも明らかになった。 これらのことから、平成25年度の研究計画がやや遅れているのが現状である。次年度も上記の点を踏まえ医薬品選出までの期間を出来るだけ短縮しながら解析を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、研究計画調書「平成26年度以降」の研究計画に従って遂行する。簡潔には、1.年齢、性別に加え、原疾患、併用薬についても解析を開始し、患者背景が解析結果に与える影響について調査する。また、2.医薬品の販売経過年数、製薬企業等の安全性情報発出が解析結果に与える影響を明確にする。 具体的には、1.について、FAERSデータベースには、報告された医薬品の使用目的として適応症が登録されている。この適応症の情報に基づき、特定の原疾患を持つ症例と持たない症例に層別化し、特定の原疾患の治療薬として汎用される医薬品を解析対象として、スコアを比較する。スコアの変動の有無や変動幅の検討から、原疾患の症状のうちシグナルとして検出されやすい症状が明らかになると考える。併用薬についても同様の調査を行う。 2.について、発売年あるいは安全性情報発出年を起点とし、そこから1年ずつ期間を区切りスコアの変動の有無を確認する。スコアが変動する場合は、その変動と報告数の一時的増加との相関を調べる。また、1年ずつ期間を区切った場合と、販売後あるいは安全性情報発出から現在までの全期間を解析対象とした場合で、スコアを比較する。これにより、有害事象自発報告データの解析対象期間を適切に設定するための知見が得られると考える。 これらの解析結果を利用して、4種の統計学的手法によりシグナルとして検出された有害事象の数およびスコアを比較し、平成25年度の研究結果より明らかになった各種統計学的手法の解析結果の特徴の普遍性について検討する。 以上の研究結果を総合的に評価し、有害事象自発報告データの弱点を理解し、その対応策を確立することにつなげる。
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