膨大なデータを保有するFAERSデータベースに各種統計学的手法を適応し、医薬品と有害事象との関連性をシグナルとして検出することが試みられている。本研究では、①各種統計学的手法の解析結果の特徴、②患者背景や医薬品の販売経過年数、製薬企業等からの安全性情報発出が解析結果に与える影響、について検討した。①に関して、平成25年度には「シグナル検出される有害事象の種類はROR法が最も多く、EBGM法が最も少ない、また、EBGM法でシグナル検出された有害事象は全てROR法でシグナル検出された有害事象に包含される」ことを明らかにした。平成26年度は、データの解析対象期間を6年間から14年間に、さらに平成27年度は17年間(1997年から2014年)に拡大しその普遍性の検証を実施した。また、平成27年度は、データベースが違う場合にもこの特徴が保たれるかを明らかにするために、日本の医薬品副作用報告データベースであるJADERでも同様の解析を開始し、平成28年度内に4種のシグナル検出手法での結果が揃ったため現在論文投稿準備中である。②に関して、性別や年齢による層別解析の有無がシグナルの検出結果に及ぼす影響について、平成27年度は多発性骨髄腫治療薬での解析結果を学会にて報告するとともに、平成28年度は関節リウマチ治療薬や抗生物質投与による有害事象の解析を継続した。関節リウマチ治療薬によるB型肝炎再燃についての解析結果は現在論文投稿準備中である。加えて平成28年度にはJADERに登録された発現時期を用いて注目する有害事象の発現時期の解析を実施するにあたり、データの特徴を把握するためにSGLT2阻害剤の皮膚障害に注目し、各製薬企業から情報提供されている皮膚障害の発現状況とJADERに登録された発現時期とを比較し、JADERから得られた解析結果の妥当性を検証し学会にて報告した。
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