研究課題
基盤研究(C)
免疫抑制薬であるミコフェノール酸(MPA)は、イノシンモノホスフェイト脱水素酵素 (IMPDH)を特異的に阻害し、MPAのTDMではAUCに基づく投与設計が推奨されている。本研究では、薬物治療管理におけるMPA代謝物およびIMPDH活性測定の意義について検討するため、LC-MS/MSを用いた測定系の構築を行った。MPA及びその代謝物について、臨床濃度域での良好な直線性と日内・日間再現性を得た。臨床検体を用いて検討したところ、LC-MS/MS法によるMPA濃度は、2種のTDM用全自動測定器を用いた値と良好な対応を示したが、MPAGやAcMPAG濃度の個体間変動は大きかった。また、インキュベート時間に対してXMP生成量は直線的に増加する一方、AMPは一定値を示し、AMPによる細胞数補正を用いたIMPDH活性の評価が可能であることが示された。本測定系を用いて、2013年度は、造血幹細胞移植患者13名のPK/PDデータを収集した。また、MPAのタンパク結合率は98 %と高いため、無アルブミンラット(NAR)を用いた検討を並行して行った。その結果、MPAのタンパク結合率は正常ラット及びNARで、それぞれ98%と80%であり、MPAのAUCはNARにおいて正常の約1/25まで低下していたが、遊離型MPAのAUCは約1/2程度の値を示した。また、NARにおけるIMPDH阻害に対するIC50値は、血漿中MPA濃度では正常ラットの約1/100であったが、遊離型MPAの場合には正常ラットと近似する値を示した。以上、IMPDH活性は遊離型MPA濃度と強い相関を示すことから、低アルブミン時には、血漿中MPA濃度に基づく投与設計では免疫抑制作用が増強する可能性のあることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
臨床データも順調に収集できており、モデル動物を用いた検討も、予定モデルから変更したものの、順調に結果が得られているため。
当初の予定通り、臨床データの収集を続けるとともに、動物データについて、解析を進め、論文投稿を目指す。
他の外部資金が採択され、年度を超えて使用できない経費であるため優先して使用し、当該助成金の次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、物品費、旅費、その他経費に充て、研究計画の早期実現を目指す。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Jpn. J. Ther. Drug Monit.
巻: 31 ページ: 1-5
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巻: 未定 ページ: 印刷中
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http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2012/12/rinshoja.pdf